大井川通信

大井川あたりの事ども

介護と演劇

もう一か月以上前になるが、介護をテーマにした演劇ワークショップに参加した。正式名称は「老いと介護 演劇の力」で、講師は俳優にして介護福祉士の菅原直樹さんだった。座学が一時間で、そのあと三時間のワークショップがあった。参加者は20名ほどで、その…

少しだけサガンのこと

この二年ばかり小説を読む読書会に参加するようになって、僕も苦手だった小説を定期的に読むようになった。 何より驚いたのは、僕らのようなごく普通の生活者同士が言葉を交わす素材として、評論より、小説のほうがずっとふさわしいということだった。一見、…

『悲しみよ こんにちは』 フランソワーズ・サガン 1954

この有名な小説を、読書会のために初めて読む。予想外に面白かった。 まず、文章がとても正確で、気持ちがいい。たとえば、シリルとの密会のあと、家にもどったセシルが、アンヌの前で気まずくタバコを吸おうとする瞬間の仕草が、コマ撮り写真のように描かれ…

ヒラトモ様発見6周年

里山のてっぺんにヒラトモ様のほこらを発見して、今日で6年がたった。 郷土の伝説の聞き書きの古い本に、平和様という不思議な当て字(誤字)で紹介されているだけの神様が、実際に残されているかどうかは、半信半疑だった。大井を囲む里山のうち街側の半分…

諦めと手遊び

何度か触れてきたけれども、僕の実家は、伯父の家の敷地の奥にあって、家の大きさだけでなく、その暮らしぶりにも経済的な格差があった。それだけでなく、自分たちの立場がやや不安定であることにも、小さい時からうすうす気づいていたのだと思う。 似たもの…

トミカ50周年

ミニカーのトミカが誕生して、今年で50年になるそうだ。その時発売されたラインナップのうち、トヨタ2000GTとファレデイZという二種類のスポーツカーのモデルを買った記憶があるので、小学3年生の僕は、トミカの誕生に立ち会ったことになる。 そのことが書…

大学に入学した年

安部文範さんと折尾のブックバーに行く。 マスターが、安部さんと同じ大学の文学部の後輩とわかって、大学の入学年が話題になった。安部さんは、1969年の入学で、学生運動のただ中に足を踏み入れた世代だ。当時は、一年、二年の入学時期の差で、入学後の運命…

蜜柑と翡翠

うつうつ、くさくさした気持ちで道を歩いていた。考えないようにしても、いつのまにか考えてしまう。考え出すと、ぐるぐると止まらなくなる。いかりやうらみつらみなどの感情がわきだして、あふれだし、のみこまれる。そのとき。 道のわきの水路のよどんだ流…

ムラの長老たち

お正月に和歌神社を参拝したとき、拝殿の掃除をしていた組長さんご夫妻と話をした。一か月ばかりまえに、力丸ヒロシさんの奥さんが亡くなったという。 大正14年生まれのヒロシさんからは、ヒラトモ様やミロク様、大井炭坑のことなど、大井村の昔の様子を何度…

年初の大井案内

朝の散歩をかねて、姉に大井の周辺を案内する。住宅街から、秀円寺の裏山を伝って集落に降りる。ここには里山の雰囲気がかろうじて残っている。ひっそりと天保の石仏、享保の庚申塔があって、歴史の世界へと誘う入口となる。 大井川を渡り、クロスミ様へと続…

「なべやきうどん」の味

僕の実家では、今のように外食をする機会はほとんどなかった。時代は高度成長期で、まだ国民の多くは清貧な暮らしにとどまっていて、消費社会なんてものが成立する前だった。 その分、これも多くあったわけではないが、家で食事の準備ができなかったときに、…

僕たちの「リロケーションギャップ」

僕の姉は、20代で実家を出てから、30年以上毎週のように実家に通い続けた。特に両親が老いて病身になってからは、彼らの支えになっていたし、二年前に母親が家を出たあとも、毎週末、家の管理をしに出向いていた。 母親が亡くなって、空き家になった自宅…

ハヤブサを見た

昼休み、河口付近の商業施設にお昼ごはんを食べに行く。すぐ頭の上の空を、二羽の鳥がもつれながら飛んでいく。カラスか何かがじゃれているのかと、反射的に思った。 しかし、川の向こうに逃れていった一羽はハトで、取り逃がした方の一羽は、今度は急転回し…

鳥居の話

元乃隅神社はごく新しい神社だが、その姿には景観の見事さという以上の説得力が感じられる。断崖絶壁の岩場に立てられた鳥居は、参詣者のためのものというよりも、海からやってくる超自然的な存在を迎え入れるためゲートと考えるほうが自然だろう。 諸星大二…

大風のなかのチョウゲンポウ

冬の嵐のような大風の中、自在に飛び回る鷹を見て、気持ちが高まったという話。 僕の住むあたりより山側の集落で車を走らせているとき、鷹らしき鳥の姿が目に留まったので道路わきに車をとめて、単眼鏡をもって外に出た。 鷹は二羽いる。細長い翼の先がとが…

初代ターセル後期型ソフィア

箸休めにもならない内容だが、僕が生まれて初めて購入した車がなんであったか、という話。 会社員になって二年目だと思うが、中古車屋から40万か50万くらいで1300㏄の3ドアの赤い小型車を買った。1985年のことだ。免許を取ってから1年以上空いていたから、…

初春の女郎蜘蛛

暖かいお正月だったが、今日にいたっては日中20℃にもなった。4月の陽気である。 正月連休前には、職場近くの林のジョロウグモは、二匹を残すのみだった。前年の冬よりサバイバーの数は少ない。久しぶりにのぞいてみると、一匹だけは年を越してまだ生きて…

ヒラトモ様と「海竜祭の夜」

諸星大二郎の妖怪ハンターシリーズ「海竜祭の夜」は、加美島という架空の孤島の祭りが舞台になっている。島には安徳神社があり、浜辺には鳥居が並んでいるが、不思議な事にその鳥居は陸に向わず、カーブを描いて再び海に向いている。 海竜祭は、壇之浦で平家…

神々への初詣

正月の旅行から戻って、めまいが再発するなど体調がすぐれず、正月5日になってやっと大井の神々への初詣がかなった。 和歌神社、水神様の前で黙礼して、久しぶりに里山に入る。やはり竹が倒れて道があれている。昨年から息切れ勝ちでもあるし、山の中でたお…

こんな夢を見た(映画)

弓の老名人、といっても西洋人風だからアーチェリーかもしれないが、とにかく彼が若い愛人に裏切られて捨てられる。彼は、二人の女性を仲間にして、元愛人への復讐を企てる。 元愛人が花形選手として出る大会がある施設で開かれるのだが、そこから斜面を登っ…

こんな夢をみた(初夢)

ある知人が弁舌さわやかに話をするのを聞く。僕が尊敬し好きな知人だ。しかし、そのあと迷い込んだ路地で、偶然彼の別れた奥さんがやっているスナックのような店に足をいれてしまう。彼女は、元だんなは言葉が巧みだけれども・・・と言って言葉をにごす。 い…

元乃隅神社と諸星大二郎

萩の近くでは、元乃隅(もとのすみ)神社が、観光スポットとして、いつの間にか有名になっている。写真を見ると確かに魅力的なロケーションなので、二日目のメインの立ち寄り先に選んだ。 1955年の創建という新しい神社だが、白狐のお告げによるという稲荷社…

家族旅行と松陰神社

年末にバタバタとホテルを予約して、元日から一泊二日で家族旅行にでかける。家族4人で泊りがけのドライブに出かけるのは、ほとんど10年ぶりだ。長男の高校合格が決まって、そのお祝いもかねて津和野に行ったのが最後だった。それ以降は、子どもたちも自…

年末の一日

大晦日になってようやく時間がとれたので、小倉の黄金市場にでかける。「なんもかんもたいへん」のおじさんに年末のあいさつをするためだ。 モノレールを降りて、黄金市場の入り口に近づくと、意外なことにいつもより人通りが多い。寿司屋の前には、ビニール…

高学歴ニートにおごる金はない

次男には、子どもの頃から不思議な才能が有って、家にあるおもちゃを組み合わせて、自分で新しい遊びのルールを思いついたりした。そんなとき、おとなしい長男は、4歳年下の弟の考えた遊びに喜んで加わっていた。 中学の時の特別支援学級の担任に久し振りに…

銀杏のホウキ

高村光太郎の詩「冬が来た」の中に、銀杏の木も箒になった、という表現がある。読書会で読んでいて、これがよくわからないという感想があった。冬になって、銀杏の黄葉が落ちつくして、残った枝がまるで竹ぼうきのように見えるということだろう。 僕には抵抗…

「すべての瑣事はみな一大事となり/又組織となる」

詩歌を読む読書会で、高村光太郎(1883-1956)の処女詩集『道程』(1914)を読んだ。ひと昔の前の評論では、日本近代詩の傑作詩集みたいな言葉が躍っているが、今普通に読むと、詩として受け取るのはけっこうきつい。会の主宰も「つまらなかった」ともらし…

クレープの味

妻から聞いた話。 金曜日の夜は、次男は一駅前で降りて、ショッピングモールの中で夕食をとり、整骨院でマッサージを受けてリラックスする。僕が忘年会だったので、長男の運転でモールの次男を迎えに行き、3人分のクレープを買って戻ったそうだ。 テーブルを…

落とし物シンドローム

妻が彫金教室の帰り、道具や作品をつめたキャリーバックを無くしたと青くなっている。博多駅前広場でイルミネーションを見て、ケーキを買って、駅ビルのエスカレーターに乗っているとき、ふと、キャリーバックを引いていないことに気づいたのだという。中に…

ハイイロゲンゴロウの昇天

今年、十何年かぶりかで、ゲンゴロウを飼った。その前は、50年前の小学生の時にさかのぼる。 今年は、ウスイロシマゲンゴロウという、初めての種類を見つけたのがきっかけだった。8月13日のことだ。ウスイロは、小さなオタマジャクシを与えたときなど、ハ…