大井川通信

大井川あたりの事ども

作文的思考と同和問題(その2)

イデオロギー批判とか、自己欺瞞の指摘とか、抽象的に言ってもわかりにくいだろう。具体的にはこういうことだ。 大学生の僕は、差別ということの大元が、「ひとくくり」であることに気づいた。ひとくくりにしてしまうから、どんな切り捨ても不当な扱いも可能…

作文的思考と同和問題

社会人となってから、僕は東京から地方へ転居した。地方には、東京では見えなった被差別部落の解放運動があって、偶然のきっかけから、同和教育の運動とかかわるようになった。 そこでの経験を通じて、僕はかなりのエネルギーを使って、多くの作文を書いたけ…

作文的思考と「障害者」の運動

大学時代、岡庭昇を読んで自分なりの作文を書き始めた頃、地元の地域での運動にかかわった。きっかけは、成人式の自主開催を求めるみたいな集まりだったけれども、会場として使った公民館で、「障害」を持った人たちと出会うことになった。 公民館の青年学級…

作文的思考と岡庭昇

大学2年生の時に、国立中央図書館の書架で岡庭昇の『萩原朔太郎』を手にとって読むことがなければ、僕は今にいたるまで、作文を書き続けることはなかったと思う。 それは、自分の頭で、自分の手持ちの言葉で、誰それの権威によりかかることなく、外の世界に…

ネットのよる学習について(3)

図書館司書資格のためのネット学習についてプラス面を書いたので、今度はマイナス面を。 大学制度の問題なのか、その中で通信制というものの問題なのか、図書館学の問題なのか、図書館司書資格の問題なのか判別できないが、14科目の内容に重複が多すぎる。…

ネットによる学習について(2)

残り2科目は、自習ではなくて、「面接授業」を受けないといけない。これは3日間のスクーリングと、メディア授業とが選択できるので、当然ネットで受講できるメディア授業を選択したのだが、あとからこちらの方がはるかに大変だということに気づいた。 ネッ…

ネットによる学習について(1)

今年度の後半、通信制大学の科目履修生になって、図書館司書の学習をした。すべて教科書とネットによる学習で、すいぶんと発見があった。 一科目あたりの自分の学習パターンは、こんなふうだ。まずはテキストを流し読みする。そのあと指定された課題で200…

願わくは花の下にて・・・

例年、サクラの開花はそれなりに気になっていた。満開のサクラには心を奪われたし、それが散るのを惜しむ気持ちもあった。 サクラの開花と前後して、ツバメたちが南国から海を越えてやってくる。彼らの苦労を思いながら、初めの一羽の姿を見るのを心待ちにし…

ハトは速い

川沿いの土手の道を車で通勤している。 いろんな鳥とすれ違ったり、鳥が横切ったりする。時々、川の上を飛ぶ鳥と、並んで走るようなことがある。 鳥がいったい、時速何キロくらいで飛ぶのか興味があるから、そういうときは、わざと鳥のスピードに合わせて走…

ブログ的思考

ブログを書き始めて9か月ほど経ってから、毎日の記事を(多少おくれながらも)かならず書くようになった。それからもう3年目に入っている。 毎日書くと、どうしても下手な記事も交じってしまう。しかし、間隔を開けたところで、つまらない記事を書いてしまう…

作文的思考(続き)

4年くらい前のことだ。安部さんとやっていた勉強会で、「作文的思考」というテーマで報告をした。そのレジュメの初めの文章。 「安部さんから不意に、僕が昔書いた文章について切り出された。どんなものであれ書くことによって思考は紡がれるし、いったん刻…

作文的思考

僕は、以前から、自分が書いているものが「作文」であると考えてきた。学校の授業で書かされた、あれだ。源流をたどれば「生活つづり方」みたいなものになるのだろうけれども、ふつうに作文というのがしっくりくる。 学校の授業で、作文がとくに得意だったわ…

『目羅博士』再論

乱歩の『目羅博士』についてもう一言。 元ネタといわれる二編の小説を読んでみて、この模倣をテーマにした小説が、いかに模倣されたかという問題に興味を持つ人がけっこういることに気づいた。最近では、研究論文まで書かれていて、ネットで読むこともできる…

生き物の春

庭仕事をしている妻が、人懐こい可愛い小鳥を見つけたという。お腹がオレンジで、背中が黒で、白い紋があって・・・ジョウビタキにちがいない。基本的に人なれしているジョウビタキの中にも、びっくりするくらい人懐こい鳥がいたりする。 でも、ジョウビタキ…

目羅博士vs.いたち婆

目羅博士の試練はつづき、蜘蛛女との対決の次は、「いたち婆」というあだ名の奇怪な老婆が相手となる。いたち婆が登場するのは、エルクマン・シャトリアンの短編『見えない眼』(1857)である。 前回の対決作品エーヴェルス『蜘蛛』(1908)よりさらに半世紀…

BAND-MAIDに激ハマリする(その2)

2月の終わりに、このバンドをネットの動画で見つけて以来、相変わらず、自由時間の大半を、バンドの動画を見たり、音源を聞いたりすることに費やしている。アルバムも現物を二枚買った。 一週間くらい前、バンドの公式サイトでこんな告知を見つけた。参加す…

葬儀というもの

この年齢となると、いろいろな関係で葬儀に立ち会うことが多くなる。葬儀の間には、死者のことや、葬儀というものについて、思いを巡らすことになる。 信仰が薄くなっている時代には、葬儀というものの形式性が、どうしても気になってしまう。おそらく、人の…

父の誕生日

父の誕生日ということで、東京の姉にメールをする。 命日というのは、降ってわいた災害みたいなもので、当人にはあずかり知らない日付だ。死ぬことによって確定する日を、あらかじめ生きているうちに知ることはできないい。それならば、生前本人が大切に思っ…

ある哲学カフェにて

もう、4、5年ばかり前になるが、同じ街の古い街道沿いにあるカフェで哲学の勉強会にしばらく参加していたことがあった。 主宰は、ドイツ観念論の研究者で、予備校講師や大学講師をやりながら市民運動を続けている尊敬できる人だった。僕が参加し始めたとき…

伊東忠太と徳永庸

安部正弘氏の手記には、大正10年(1921年)に日本海観戦記念事業を思い立ち、翌年には、建築界の権威伊東忠太博士に設計を依頼したことが記されている。伊東忠太(1867-1954)は、スケールの大きな建築史家、建築家として知られる。明治時代に「建築」とい…

建築家徳永庸のこと

安部さんからメールで、「日本海海戦紀念碑」の設計者のついての質問が入る。「徳永庸」という名前を思い出して返信したのだが、決して有名ではない彼の名が、すぐに浮かんだのが不思議だった。たしかに15年ばかり前に因縁があったのだが、今の僕は中年過ぎ…

四半世紀

自分が20歳を迎えた時のことはよく覚えていない。30歳の時も、40歳の時も、もちろんそれなりに感慨はあったはずだが、特に記憶に残っていない。ただ、25歳になったときに考えたことは、はっきり覚えている。 100年という大きな時間の単位の四分の一を生きた…

目羅博士vs.蜘蛛女

江戸川乱歩の短編『目羅博士』(1931)が好きだったので、乱歩自身が着想を借りたと告白しているエーベェルス(1871-1943)の『蜘蛛』と読み比べてみたいとずっと思っていた。 エーベェルスの短編も、実際に起きたパリのホテルでの連続殺人事件を下敷きにし…

テレビを記録するということ

ファミリーレストランでの勉強会の席で、目の前にいる吉田さんがみるみる見知らぬ人へと変わっていく。知り合って6年くらいになるし、その間いろいろな会合で顔をあわせることが多かった。特にこの一年間は、一対一で毎月5時間くらいは議論している。たいて…

『大津絵』 クリストフ・マルケ 角川ソフィア文庫 2016

学術書や専門書の入った文庫として、昔はよく濃紺の表紙の講談社学術文庫(1976-)を買っていた。いつのまにか、後発で白い表紙のちくま学芸文庫(1992-)を買うことの方が多くなった。それがこの頃は、クリーム色の表紙の角川ソフィア文庫(1999-)を手…

自覚のない労働者なんて、労働者だと言えませんよ

50年くらい前の、ハンディサイズの古い文学全集の一冊を200円で買って、椎名鱗三をぼちぼち読んでいる。僕は本に関してだけ、妙に潔癖症で、本当は古本は苦手だ。しかし、この本は、初めてページを開く感触があったから、誰も開いたことのない本だったのだろ…

カーブのむこう

五日ばかり空いてしまったが、「○○のむこう」シリーズの第三弾。安部公房の1966年の短編『カーブの向う』から。 坂道を上っている勤め人風の男がふと、カーブした坂道の先、丘の上がどんな世界につながっているのかわからなくなり、足が止まってしまう。坂を…

「方舟大井丸」の出航(その2)

旧大井村で住宅街の向かいにある里山には開発の手は及んでいないが、小説の「ひばりケ丘」と同様、ミカン畑が目立っている。しかし今では採算がとれず、太陽光発電のソーラーパネルに置き換わりつつある。 しかし、この里山の地下には、かつての大井炭坑の坑…

「方舟大井丸」の出航(その1)

安部公房の『方舟さくら丸』を、ニュータウンと呼ばれる郊外の成立のからくりを描いた小説として読んでみた。ニュータウンが抱え込む闇の部分をいちはやく取り出しているからこそ、ニュータウンがオールドタウンと化して様々な問題が噴出している今でも、い…

雨の日の鳥/晴れの日の鳥

雨の日、津屋崎の安部さんの家に遊びに行こうと思って、用山の峠を抜けると、玄界灘が見渡せる下り坂の電線に大きい鳥が止まっている。トビかと思って通り過ぎたのだが、ちょっと違和感がある。少し先に車を停めて、双眼鏡で振り返ってみる。 トビよりずんぐ…