大井川通信

大井川あたりの事ども

モノの話

眼鏡の話

僕は、子どもの頃から視力がそこそこ良くて、2.0の時もあった。本は好きでも、実際に読む時間は短いことも幸いしてか、大人になって視力が目に見えて下がることもなかった。テレビゲームもしなかったし、仕事以外でパソコンをいじる趣味もなかった。 老眼で…

『初心者のための天台望遠鏡の作り方 屈折篇』 誠文堂新光社 1967

子どもの時の懐かしい蔵書シリーズ。ブルーの地味な表紙の薄い本と、再会を果たせて感無量だ。 1940年生まれのエコノミスト野口悠紀雄さんの本に、子どもの時、天体望遠鏡を自作したことが書いてある。おそらく、1950年代には、レンズ等を購入して、あとは自…

イノシシと野ウサギ

かつては、人間たちのくらしの身近な隣人だった動物たち。都会暮らしとは言わないまでも、ふつうに街で暮らしていると、彼らに出会う機会はまったくなくなっている。昔話や絵本でおなじみの動物でも、実際の姿には驚くことが多い。 たとえばイノシシ。僕は昔…

『科学の学校』 岩波書店編集部 1955

五巻セットの本が届く。箱はだいぶ古びているが、中身はきれいで思ったより状態がいい。長年心の片隅にひっかかっていた本を手にして、感無量だ。 敗戦後まだ10年の年に出版された子どもむけの科学の本。各巻は「宇宙と地球」「生物と人間」「物質・熱・光」…

『世界の戦闘機』 秋本実 1969

勉強会仲間の吉田さんに、近頃子どもの時の本を集めているという話をしようと思って、たまたま届いたばかりのこの本を持参した。すると彼の目の色が変わる。吉田さんもかつて飛行機好きの子どもだったのだ。それでしばらく、スカイホークやらイントルーダー…

『日本のパワーエリート』 田原総一郎 1980

1980年は、僕が高校を卒業し大学に進学した年だ。時代の大きな変化は、その少し前から始まっていたが、巨視的にみれば、消費社会が成立し、ポストモダンといわれる時代が始まるメルクマールとなる年に区切りよく環境が変わったのは、振り返りには便利である…

『滅びゆく武蔵野』 桜井正信 1971

今日届いた古書。武蔵野の古刹や風物を写した本で、モノクロの写真は重々しく、解説も文学的で重厚だ。思い出深い本だが、市立図書館で借りていたもので、自分の本ではなかった。 僕は、中学生の頃、地元の寺を訪ね歩くのが好きだった。多摩地区だから有名寺…

『鳥の博物館』なぜなぜ理科学習漫画 1966

僕が子どもの時から学習漫画というものはあったが、自分で持っていた記憶があるのはこの一冊だけだ。出版時期や内容からいって間違いないだろうと注文したのだが、郵送で届いた本には、古い友人に再会した感激はなかった。こんな本だっけ。しかし、ところど…

『航空の驚異』 小森郁雄 1971

少年少女向きの固めの評論のシリーズだったポプラブックスの一冊。本の後ろのページにあるポプラブックスのラインナップを見ると、興味深いテーマが並んでいるが、僕が読んだのは、他には『公害のはなし』くらいだ。その本では、アメリカの市民運動家ラルフ…

子どもの頃の本をあつめる

僕は子どもの時の本を一冊も持っていない。絵本や物語や図鑑、教科書も含めて。大人になってから懐かしくて手に入れたものはあるが、現物として残しているのは、せいぜい高校の時の本が数冊あるくらいではないか。 父親も本しか趣味の無い人だったけれども、…

『ここが家だ』 ベン・シャーン/アーサー・ビナード 2006

若い知り合いがやっている小さな本屋さんで購入。第五福竜丸事件を扱っているけれど、単なる告発や正義の主張に終わっていない。ベン・シャーンの連作を含めて、いろいろな方向へむかうベクトルを小さな絵本という形に押し込んでいる。そんな力に満ちた本だ…

切り株の話

椎名誠に「プラタナスの木」という小説があって、小学校の国語の教科書にも載せられている。公園のプラタナスの木と子どもたちをめぐる話で、その中に、木は枝と同じくらい地中に広く根を張っている、と書かれていた。切られてしまったプラタナスの切り株に…

手品の思い出(アストロコイン)

マッチ箱から、三本のマッチ棒を取り出し、テーブルの上に小さな三角形をつくる。その真ん中にコイン(金属のメダル)を置いて、カードをかぶせる。マッチ箱をそのカードの上にのせてから、カードごと取り去ると、マッチ棒で囲まれていたはずのコインが消え…

手品の思い出(コインの飛翔)

手品の種を買うだけではなくて、子供向けの手品の入門書を読んで、手品を覚えようともした。しかし、はっきり言おう。入門書に説明してある手品で、人を驚かせられるものなんてほとんどない。お金を払って買った種だって、使いものにならないものが大部分な…

手品の思い出(テーパー加工)

中学生の頃になると、友人たちの中には資金力にものを言わせて、いろいろな手品道具に手を出す者も出て来る。資金力では劣る僕だったが、幸いなことに、手品道具はそこまで高価なものではない。天体望遠鏡のように友だちの高額の大口径望遠鏡を指をくわえて…

手品の思い出(リングとコイン)

親戚のおばさんから「悟空の玉」を見せられた後のことだと思う。もう一つ鮮烈な手品体験があった。ある時小学校の通学路の途中で、手品を見せて売っている人に出会ったのだ。住宅街の中の学校だから、通学路でモノを売る人など珍しかったと思う。当時は、学…

手品の思い出(悟空の玉)

あきっぽい僕が、一番長く続けてきた趣味は、手品なのではないかと思う。本格的に習ったことも、大きな舞台で演じたこともないが、ずいぶん長く細々と演じ続けてきた。 はじめの記憶。小学生の低学年の頃だろうか、学校の先生をしていた叔母が、コップと玉を…

駅弁をめぐるイリュージョン

駅弁容器とミニチュア駅弁のセットを玄関に展示するプランが未遂におわった話を書くために、久しぶりにコレクションを取り出してながめてみた。やはりいい。このまま仕舞うのはもったいない気がして、何気なく職場にもっていくことにした。 明日から職場の若…

駅弁の悦楽と失望

旅を楽しむ余裕がないから、各地の駅弁を食べ歩いているわけでもない。半額弁当に血道をあげる人間が、スーパーの駅弁祭りとかでお弁当の最高峰である高額駅弁においそれと手をだせるわけがない。 では、なぜ駅弁なのか。昔、食玩(菓子に添付された玩具)に…

半額弁当の愉楽

ある全国紙の地方版に、こんな記事を見つけた。スーパーの半額シールをはがして別の商品に勝手に貼り直してレジで購入しようとした男が逮捕されたとのこと。まあ店から警察に通報されて逮捕されたのは仕方がないとしよう。しかし、こんな「事件」をわざわざ…

宇宙人の頭骨(ヒラタブンブク)と諸星大二郎さん

職場が海の近くなので、昼休みにビーチコーミングをすることがある。僕の歩く浜辺では、あまり貝は多くない。それでいつのまにか、ウニの殻を集めるようになった。 浜辺に打ち上げられたウニのカラは、もちろん棘などはすっかりとれている。真中に丸い穴の開…

ちくわぶ(竹輪麩)の味

玉乃井に年始の挨拶にうかがって、安部さんと東京の食べ物の話になった。安部さんは、初めは苦手だった納豆も食べられるようになったが、ちくわぶだけはだめだった。あんな不味いものはないという。 僕はショックを受けた。子どもの頃、実家のおでんの具の中…

家族の人形と猫の人形

今年も、筑豊山中で正月に開かれる木工の展示会に行ってみた。そこで小さな猫の人形を購入する。展示室の隅に置かれた試作品のようだったが、ご主人の内野筑豊さんに頼んで売っていただいた。 我が家には、十数年前に内野さんから買った家族の人形がある。こ…

50銭の思い出

ピカピカの50銭銀貨を手に入れて、うれしかったものだから、妻に自慢してみる。銀貨を手に取った妻は、こんな思い出を話し出す。初めて聞く話。 子どもの頃、博多の下町には、いろんなものをリアカーで売りに来た。オキュウトや豆、豆腐、それにさお竹や金魚…

古銭を買う

僕には、ストックブック一冊分のささやかな古銭のコレクションがある。小学生の頃通った「国立スタンプ」で、わずかな小遣いで買いあつめたもの。その後、立川の中武デパートの古銭屋で、思い出したように手を出したもの。それに、母方の実家のおじさんから…

天体望遠鏡の話

実家の片付けをしていたら、押し入れの奥に細長い段ボールが立てかけてあるのを見つけた。すっかり忘れていたが、小学生の時に買った天体望遠鏡である。 アポロ計画をはじめとする宇宙開発にも影響されたのだろうが、当時の子どもたちの間で、天文学や天体観…

9469060522

亡くなった父親は、ちょっとした小物などでも、目立たない場所に購入日を書き込む習慣があった。数字の羅列なのだが、まずは西暦の下二桁。つぎに元号、そのあとに月日がつづく。 しかし、今回、小さな収納箱の引き出しの裏に、表題の長い数字の並びを見つけ…

コロッケとメンチカツ

読書会で林芙美子の短編を読んだ。やはり話題は「貧乏」のことに。そこで、自分の貧乏エピソードを話してみた。 子どもの頃、夕食のおかずなどでコロッケを食べることはあっても、メンチカツを食べる機会はあまりなかった。もしかしたら経済的な事情というよ…

天保通宝の来歴

少し前から、お財布に天保通宝を入れてある。なぜそんなことを思いついたのか、はっきりと覚えていない。ただ、生まれた時代が違っても、同じコインということで、小銭入れの中でよくなじんでいるのに驚いている。 レジの時に、500円玉の代わりに出しても良…

巨大なもの

これまた、今頃になってビデオ録画した『シン・ゴジラ』(2016)を観た。十分面白く、楽しめる作品だった。冷静になれば、生物にすぎないゴジラを、あれほど強力な存在に描くのは無理があるし、そのわりに無防備に活動停止してしまうのはどうかと思う。しか…