大井川通信

大井川あたりの事ども

モノの話

「東京ケーキ」と再会する

東京から九州に住まいを移して30年以上が経ったが、風土や習慣などの違いに気づくことが多かった。お祭りの縁日で、「東京ケーキ」というお菓子が売られているのも、東京ではまったく見たことのない屋台だけに印象に残った。 地元の人には子どもの頃からなじ…

デパートで手品を買い始めた頃

1960年代末に立川のデパートの玩具売場では、テンヨーの手品道具だけが置かれていたと思う。テンヨーの製品は、今では吊り下げて展示されるのが主流だが、当時は小箱に入ったものがガラスケースの中に並んでいた。 小箱は黄色や緑色がベースの装丁で、子ども…

デパートの焼きそばの思い出

子どもの頃、母親の買い物についていくのが楽しみだった。駅前の西友や地元の商店街に行くことが多かったが、休日などには隣町の立川までバスででかけた。立川は駅前にいくつものデパートが並ぶこの地域一の繁華街で、あこがれの街だった。 やがて小学校の上…

拍子木はどこで買えますか?

長崎市内の商店街を歩き、茶わん蒸しの専門店「吉宗(よっそう)」を目指す。妻のリクエストだったので、僕は前情報なしに来たのだが、江戸時代の商家のような立派な店構えで、行列ができている。 我が家の家風として名店は避けるし行列を待つようなこらえ性…

友達にお金を貸すこと(後半戦)

この二年半、友人に借金返済の話はまったくしなかった。コロナ禍も続いていたし、友人の体調の問題もある。とても切り出せる気はしなかったし、あれだけしっかり言ってあるから大丈夫だろうと思っていたのだ。 友人にも大きな仕事が入り出して、そろそろ返済…

友達にお金を貸すこと(前半戦)

友達に貸したお金はかえってこない。だから、あげるつもりでないと貸してはいけないというのは大原則だ。友人からお金がかえってこないと泣き言をいうのは愚かである。そう思ってきた。 知り合いに借金するのは最終手段だろう。相手方の経済はひっ迫している…

ワコール・リーカーミシン館の絵葉書

ネットのオークションで見つけた日本万国博覧会(1970)のパビリオンの絵葉書が届く。万博関連では高値のものも多いが、これは数百円だった。 ワコール・リッカーミシン館。平板な渦巻き状の白い建物の上に、大きな平たい円盤状の屋根をかかげた未来的なデザ…

へびゴマ物語(その4 大団円)

久しぶりにネットでへびゴマの検索をしようと思いついたのは、虫の知らせがあったからか。手元にあるプラスチックの新しいへびゴマなら市場に出回っているのはわかっているが、もしかしたら別のへびゴマが見つかるかもしれない。 そうしたらなんと、あの思い…

へびゴマ物語(その3 へびゴマはリゾームか?)

おっさんちは国分寺崖線の段丘上にあったので、僕たちがそこに行くにはどこかの坂(有名な「たまらん坂」もその一つ)をのぼらないといけなかった。 おっさんちのあたりから国分寺崖線を東にたどると、3キロほどで、東京経済大学のキャンパスにぶつかる。崖…

へびゴマ物語(その2 ついに発見!)

まだおっさんちのお店の建物が残っているうちは、あの中にへびゴマのおもちゃが残っているかもしれないから、なんとか入れないかと考えたりした。大人になって東京を離れたあとも、深夜のおっさんちに侵入する夢を未練がましく見ることがあった。 やがて観光…

へびゴマ物語(その1 おっさんち)

僕は東京郊外の新興住宅街に育ったためか、典型的な駄菓子屋を知らずに育った。そのことに気づかされたのは、別府浜脇温泉で育った同世代の吉田さんと話していたときだ。 整然と区画整理された町のいくつかの商店街には、それぞれ個性的なおもちゃ屋さんがあ…

出来事が沸騰する

ごくごく平凡な毎日を送っているが、何かがきっかけになって、いろいろな出来事が一時に押し寄せてくることがある。今がそうだ。他人から見れば、ちいさなさざ波に過ぎなくても、本人にとってはちょっとした事件だ。一つ一つの出来事は、それぞれ過去にそれ…

本を速攻で処分する

定年前の二年間、ある事務所の所長を務めたとき、自分には読書くらいしか武器はないのだからと、仕事の関連本をひたすら読んだ時期がある。それを自分の執務室の書棚に読了順に端から並べていった。 読了本を背景にして仕事をするのは、自信にもなったし、多…

続続・本をならべる

本をどう整理するかが、僕にとって年来の課題だ。 絶対数を減らすのが一番かんじんなことだとはわかっているが、処分した本があとで必要になったりもするので、その選別作業に膨大なエネルギーが必要になり、時間ばかりかかって整理がまったくすすまなくなる…

日傘くるくる

日傘を始めて買ったのは、数年前の真夏の東京旅行だった。自分にとっての「聖地」を訪問したのだが、殺人的な暑さでコンビニで日傘に手を出した。しかし、その後も日常的に日傘を使うことはなかった。 今のJR通勤では、朝は正面から朝日を浴びて駅まで歩く…

ハトマメ屋詣で

僕は食に関しては貧しい経験と乏しい味覚しかもっていないことは、今までも書いてきた。しかしガサツな食欲だけはあって、息子からも「食べ放題で食べすぎる(その結果お腹をこわす)」と揶揄される始末だ。 だから、食べたいものといったら、回転ずしとか餃…

ガチャガチャあれこれ(電柱とジョイフル)

電柱のマニアがいるというのは、ずいぶん前から聞いていた気がする。給水塔だとか火の見やぐらだとかマンホールだとかのマニアとともに、街の見慣れた構築物のマニアとしては老舗の部類に入るだろう。 電柱は、幼児の行動半径のなかにも必ずあるものだから、…

小倉でB級グルメする

安部さんの文集の件で、仕事を早く切り上げて、小倉に外田さんに会いに行く。早く着いたので、京町まで歩いて、娘娘に昼食を食べに行く。肉焼き飯を注文。いい年をして、こんなカロリーの高そうなものを昼間から食べていいのかなと思うが、他に食べたいもの…

積読街のビル看板

このブログでは、「積読」という用語の登場頻度が多い。あまり一般的な言葉ではないだろうから、多少後ろめたく思ってはいるのだが、買った本をすぐに読むことがまれな僕のふるまいを、これ以上便利に表現する言葉はないのだ。 そんな僕には、ねがったりかな…

回転寿司の憂鬱

今年に入ってから、店内での迷惑行為(いわゆるスシローテロ等)がSNSで拡散され、回転寿司の利用客が激減したという話は聞いていた。しかしさすがに客足も戻っているだろうと、恐る恐る土曜の昼時に「くら寿司」を夫婦でのぞいてみたら、すんなり入れただけ…

トマトラーメンの衝撃

今さら、ラーメンに衝撃を受けるとは思っていなかった。 あれほど美味しいと思った家系ラーメンも、どの系列店でもその味を再現してくれない。昔好きだった喜多方ラーメンを東京帰省時には、しつこく食べてみるもののどうもピンとこない。かつては美味しいと…

マッコリで二日酔いになる

読書会の二次会で、久しぶりにアルコールを飲んで、酔っぱらう。30年近く参加している会だから、今までに様々な恥ずかしいこと、悲惨なことを経験してきたから、多少羽目を外したところでどうということはない。 白っぽいプラスティックの容器に入った韓国の…

久しぶりに新聞を開く

コメダコーヒーでは、一般紙とスポーツ紙が読めるから、モーニングを食べながら、ざっと目を通してみる。新聞は紙面があたかもイデオロギーに統一されているかのように批判を受けることがあるが、こうして久しぶりに読んで気づくのは、あまりに雑多な情報が…

本の並べ方

書類やファイル、情報の整理というのは難しい。僕はとくにそれが大の苦手だ。本を集めたりながめたり時々読んだりするのは僕の唯一の趣味だから、本の整理だけはそこそこしているが、満足のいく並べ方ができているわけではない。 メインの本棚が4本あって、…

夏野菜のトマト煮(安部文範さんのレシピ)

朝日新聞の土曜版を開いたとき、そこに安部さん親子の写真を見つけて驚いた。家庭菜園の一角にしゃがみ込んで、収穫した野菜でいっぱいのザルを満足そうにかかげる安部さんとお父さんの写真だ。切り抜きをみると、2004年7月31日の日付があるから、今から18年…

スマホをこわす男

フォークナーを読んで、人間が意識が先回りするままに行動してしまうことや、上の空に何かをしてしまうことの描写にリアリティがあると思った。 僕も実際、何かに夢中になると、あれよあれよを突き進んでしまい、あとから何でこんなことをしてしまったのかと…

旅客機再入門(その2)

すぐに飛行機にのる機会があったので、空港でじっくり旅客機の機体を観察する。 やはり、かっこいい。しかし、どことなく単調な風景だ。かつてのジャンボのような個性的なスタイルの4発機や、DC-10のように尾翼にもエンジンを備えた3発機の姿はない。 ど…

旅客機再入門

職場の若い同僚に金曜の夜の予定を聞いてみたら、飛行場に飛行機を見に行くという意外な答えが返ってきた。飛行機が好きで、本当は空港の整備士になりたかったのだという。 こういう風変わりな趣味を聞くと、がぜん興味がわいて、真似をしたくなる。欲望とは…

合歓の木の話

しばらく前から、ババウラ池の縁に生えた木に見慣れない花がたくさん咲いていることに気づいていた。白い綿毛のハケみたいな花で、先の方はピンクに染まっている。シダの葉のような細かい葉もついている。 どこかで見たことのある木のような気もしてきて、ふ…

ブリキのおもちゃ

少し以前の話だが、先月の吉田さんとの勉強会で、食玩のブリキのおもちゃのミニチュアを持参した。その前の月に横山光輝の漫画のキャラの食玩を紹介して盛り上がったことに味を占めたものだ。 もう二十年近く前になるが、食玩(玩具がおまけについたお菓子)…