大井川通信

大井川あたりの事ども

建築

棟梁の仕事ぶり

玉乃井DIY講座で、今日は、ホコラの建具(扉)の制作を手伝う。もっとも、細かい作業になれば、僕などいっそう戦力にはならない。指示通りにほぞやほぞ穴の墨入れ(といっても鉛筆書きだが)をしたり、丸鋸で切り込みを入れてもらった後に、カンナで余分の材…

町家というもの

港町津屋崎の中心に構える豊村酒造の建物について、文化財修復の専門家の話を聞く。酒造全体では、明治から大正にかけて蔵などの諸施設が建設され、建坪千坪に及ぶ建物群を形成しており、歴史的な価値をもっているそうだ。しかし、やはり目を引くのは、店舗…

職人さんたちと

学校を卒業して、保険会社で働き出したころ。当時、事務処理でようやくコンピューターが登場したばかりの頃で、日常の図表などはふつうに手書きしていたし、計算も電卓だった。どちらも苦手な僕は、勝手の違う世界にすっかりくたびれていた。 人と紙の商売と…

『図解 古建築入門』 西和夫 1990

今、DIY講座で小さなホコラの改修を手伝っている。部材を完全にばらして、できるだけ古い部材を活かす。一部が傷んだ部材は、全体を交換するのではなく、そこだけ新しい材で埋木する。こうした考え方は、テレビドキュメンタリーで見た本格的な文化財の修復と…

ホコラを修復する

小さな木造のホコラの修復作業で、一日大工仕事をする。生涯はじめての事だ。宮大工の末席のそのまた末席に連なったみたいで、うれしい。 津屋崎の旧玉乃井旅館の玄関脇にある恵比寿様の修復を行うプロジェクトに応募したのだ。寺社建築に実績のある建築士と…

『やねのいえ』 てづかたかはる+てづかゆい 2014

昨年末、ある会合で、建築家手塚貴晴さんの講演を聞いた。手塚さんは、真冬なのに青いTシャツ姿で、いつもそれで通しているのだという。ちなみに奥さんの由比さんは赤い色で、たしか二人のお子さんにも固定したイメージカラーがあるとのことだった。講演の…

「ガラスの茶室 ー 光庵」 吉岡徳仁

知人に誘われて、デザイナー吉岡徳仁(1967-)の作った「ガラスの茶室」の展示を美術館に観に行く。想像以上によかった。魅入られた。 ステンレスの細い柱で組まれたシンプルな構造物。柱から少し内側に四方をガラスで仕切られた空間がある。屋根はシンプル…

橋の保存について

富岡八幡宮の近くに、明治11年に架けられた国産第一号の鉄橋である八幡橋(旧弾正橋)が保存されている。昭和4年に八幡宮に近い場所に架け替えられて、改称されたそうだ。長さ15メートルで、幅2メートルほどの小さな人道橋である。 人通りの少ない遊歩道…

『塔の思想』 マグダ・レヴェツ・アレクサンダー 1953

国立駅前の古書店で見つけて、古い本だが面白そうなので買ってみたが、当たりだった本。池井望の訳で、河出書房新社から1972年に出版されている。 余談だが、若いころは古本屋が大好きだったのだが、いつ頃からか、人の手垢のついた古い本というのがダメにな…

興国寺仏殿 福岡県福智町(禅宗様建築ノート2)

念願の禅宗様についての文章を書きはじめることができたので、地元では貴重な禅宗様仏殿に立ち寄ってみた。なだらかな傾斜地の奥の山懐にある曹洞宗の寺院で、なんど訪れてもロケーションはすばらしく、参拝の途上、伽藍を遠望できるのもいい。禅寺としての…

懸造は岩壁にはりつくバッタである

宇佐神宮から内陸に入ったところに院内という町があって、そこには町のいたるところに大小の石の眼鏡橋がかかっている。その町の山深い集落に、龍岩寺がある。僕はこの寺が好きで、若いころから何回もお参りしてきた。 狭い石段を登ると、小さなお寺の建物が…

古建築は大地にうずくまる甲虫である

普門院の境内に入ると、そこには不穏な空気が漂っていた。石灯籠は倒されて、池の水は干上がっている。本堂に上がる石段は、大きく波打っており、大樹の切り株ばかりが目立っていて、造成地のようなガサツな雰囲気になっている。 7月の九州北部豪雨のために…

泉福寺仏殿 大分県国東市(禅宗様建築ノート1)

今から30年ばかり前、国東半島をドライブして、泉福寺に立ち寄ったことがある。事前に情報はなかったのだが、思いがけず本格的な中世の禅宗様仏殿を見つけて、興奮して撮った写真が今でも何枚も残っている。熱心に観察する若者の姿が目に留まったのだろう、…

伊東忠太二冊

東京帰省時は、国分寺北口の小さな古本屋に寄るようにしている。神田や早稲田の古書店街に寄る気力や関心は、もはやない。ネットでたいていの古書が手に入るし、それも綺麗なのにはびっくりする。勝手な推測だが、僕が若い頃欲しかった本を購入した年長世代…

「日本の家」展で、家について考える

東京国立近代美術館で、「日本の家」展を見た。海外での展覧会の帰国展ということで、13のテーマ別に事例を取り上げているのは、わかりやすかった。「プロトタイプと大量生産」「閉鎖から解放へ」「家族を批評する」「さまざまな軽さ」「すきまの再構築」…

博多 東長寺にて

義母の墓参りで、博多にある東長寺にお参りする。空海が帰朝後に開いた最初の寺で、大学受験で「晴れむ(ハ・レ・ム)心で真言開宗」と覚えこんだ806年が創建の年だという。驚くような由緒だが、博多駅近くのビル街にあって、歴史を思い返すには不利な環境か…

倉敷と浦辺鎮太郎

倉敷は本当に面白い街だった。いわゆる美観地区という白壁の蔵と町家が連なる地域だけでなく、その周辺の街並みとの関係がとくに興味深い。 まずは美観地区の伝統建築の圧倒的な充実ぶりである。たいていこの手の街は、街道に沿って建物が一列あるだけだった…

備中国分寺 五重塔

バイパスを高速で走っていると、進行方向の田園風景の中に、五重の塔の小さなシルエットを見つけて、はっとした。その姿は、近づくにつれ魅力を増し、観る者の胸を高鳴らせる。 備中国分寺の五重の塔は、広々した田園の奥の高台にあって、周囲の木々から五層…

佐藤武夫と幻の塔

佐藤武夫(1899-1972)は、母校早稲田大学の大隈講堂(1927)の設計で建築家の仕事を開始する。キャンパスの外に少し斜めに構えて建つ講堂と、その左端にそびえる大振りな時計塔。その非対称で明快な姿を僕は気に入っていた。地元の県立美術館も彼の設計で…

新米建築士の教科書 飯塚豊 2017

著者は、「建築士になるための勉強」の機会はあっても、「一人前の建築士として食っていくための勉強」については、テキストもなく学ぶ方法もなかったという。大学では実務に役立つことは教えないし、会社では実務の中で長い時間をかけて身に着けることが要…

日本建築の特質と心 枝川裕一郎 2017

全体ありき、ではなく「部分から全体へ」という考え方を基礎にして展開される日本建築の特質を、実例をあげながら説明する。 それを Japanese Identities として日本文化論と直結させるところはやや単純化のきらいがあるが、諸特質の列挙は網羅的で、「自然…