大井川通信

大井川あたりの事ども

恐怖と事件

オウム教祖、死刑執行

麻原彰晃らオウム教団幹部の死刑が執行された。早朝から記録的な大雨となり、通勤途上、田んぼのイネもあぜ道も水没して湖面のように広がっていたり、濁流が川岸からあふれそうになったりするのを見て、不安な胸騒ぎのする朝だった。 今まで死刑囚について、…

『ハードカバー 黒衣の使者』 ティボー・タカクス 1988

若いころ、ホラー映画のビデオばかり見ている時期があった。現実逃避の時間つぶしだったような気がするが、なんとなく忘れがたい作品もある。家族にこの作品をリクエストされたので、埃をかぶったVHSのテープと再生機を取り出してきて、久しぶりに観た。 主…

化かされた話(森の恐怖)

森の中に通じる小道の入り口に、遠目には、白と黒に色分けされた紙袋のようなものが置かれている。周りで鳥が騒いでいる。あれは何だろう。 近づくにつれ、紙袋ではなく、こちら向きで座る白黒の子猫だとわかった。この辺で見たことのないかわいい猫だ。鳴き…

地下鉄サリン事件23年(事件の現場5)

1995年は、日本社会にとって大きな転換点となった年だといわれているが、僕にはそれに個人的な転機が重なり忘れがたい年になった。 1月に阪神大震災が起こり、戦後の平和な社会の中で、大都市が破壊される姿を初めて目の当たりにする。世間がまだ騒然と…

クルマの恐怖

地方都市で、転勤の多い仕事なので、実際に車でしか通勤できない職場に通うことが多い。中央分離帯なんてもののない狭い道を高速で走ると、トラックや自家用車が次々にすれ違っていく。時々、そのどれか一台がわずかにハンドル操作を誤るだけで、正面衝突の…

池のほとりで(事件の現場4)

たまに散歩したり、駐車場でつかったりする小さな公園で、酔った大学生が池に落ちて亡くなったという。先日も学生が罰ゲームか何かで防波堤から海に飛び込んで命を落としたという報道を目にしたが、こちらはよく整備された浅い池だ。大学4年生というから、…

『富江』シリーズ 伊藤潤二 1987-2000

ホラー漫画といえば、長い間楳図かずお(1936~)以外考えられなかったが、近ごろ伊藤潤二(1963~)の良さを知るようになった。『富江』は、以前に映画をビデオで何本か見て印象に残っていたが、原作を初めて読んでみた。伊藤が楳図かずお賞に応募してデビ…

博多一家四人殺害事件(事件の現場3)

大井川周辺の聞き取りでも、何らかの事件や事故に関連して、その供養のためにまつられた石仏やホコラの話が何件もでてくる。旅の人間が行き倒れになった場所に不動さんをまつったとか、殺人のたたりから子孫を守るための地蔵とか、雷に打たれて人が亡くなっ…

富岡八幡宮宮司殺人事件(事件の現場2)

昨年末に、東京の有名神社で、姉の宮司を、元宮司の弟夫婦が待ち伏せして日本刀で刺殺し、自害するという凄惨な事件が世間を騒がした。 この事件は、元宮司のかつての豪遊等の報道で、由緒ある神社の経営の乱脈ぶりを明らかにした。しょせん世俗まみれなのか…

北九州監禁殺人事件(事件の現場1)

大学を出て、新卒で就職した会社で、北九州に赴任した。前任者の借りていたアパートがモノレールの駅の近くにあって、そこに入居した。周囲はお寺が多い湿っぽい路地で、少し歩くとタバコ屋があり、小さな雑居ビルのようなマンションの一階に喫茶店もあった…

屋根の上の恐怖

先日来た台風で、この地域では久しぶりに強風が吹いた。そのあと数日して、何気なく見上げると家のテレビアンテナが倒れて、ワイヤーでかろうじて屋根の斜面にぶら下がっている。やれやれ。大手の電気店に聞くと、アンテナ交換になれば4万円くらいかかると…

庭の恐怖

実家の庭の隅に小さな小屋があって、その裏に回ると、隣の敷地の板塀との狭いすき間から、道の脇に立つ木製の電柱を見上げることができた。電柱の上部には、変圧器みたいなものがついていて、丸形のガイシがついていた。幼い僕には、それがバケモノの丸い目…

家庭の恐怖

妻は、実の兄との関係があまりよくなかった。それで10年ばかり会っていなかったのだが、先日、突然の訃報があった。通夜と葬儀に出て、いざ出棺の時に、手を合わせて「では、さようなら。来世は私の前に現れないでください」とお祈りして、お別れしたそうだ…

住宅街の恐怖

今の街に引っ越して、まだ間もない時だったと思う。住宅の数も少なくて、今より周辺もだいぶさみしかった。夜中、子どもを残して夫婦で車を出した。翌日の用事にそなえて、買い物とガソリンの給油に行ったと記憶している。当時3歳の長男は寝付いていたし、…

里山の恐怖(その2)

ヒラトモ様のことは、村のお年寄りからの聞き取りと、幕末以来の文献で、薄皮をはぐようにわかってきた。それとともに恐怖の気持ちも薄らいできた。 おそらく事実はこうだ。初めは、時代のわからない武人の墓が山頂にあるだけだった。幕末に村人が盗掘のタタ…

村里の恐怖

ムツ子さんは、大井村で庄屋を務めた旧家にお嫁に来た。屋敷の裏手には、大きな銀杏の木があり、根元に扁平な大きな石が立ててある。イシボトケ様と呼ばれ、先祖の山伏をまつっているという。冬になると、銀杏はすっかり黄色い葉を落とし、それが屋敷の前の…

里山の恐怖

『荒神』には実際の山村のリアリティや怖さが描かれていないと書いた。大井川近辺での体験から、それを拾い出してみる。 もう3年以上前のことだ。半世紀前に出版された地元の郷土史家の聞き書きで、大井村の里山にヒラトモ様という神様が祀られていることを…

荒神 宮部みゆき 2014

今年になって文庫化。恐ろしい山の神がもたらす災厄を江戸時代の山村を舞台に描いていると聞いて、ふだん手にしない人気作家の長編を読んでみた。おそらく娯楽小説としてよくできていて、とくに結末に向けてどんどん物語にひきこまれた。ただ、読書の関心が…

カラスの恐怖

通勤では、森の峠道を走るから、タヌキが車に轢かれているのによく出くわす。そのつど、タヌキの家族のことや、魂の抜けた死体がしんと静かなことが、一瞬頭をかすめたりするが、それだけのことだ。 ところが今朝は、猫の礫死体があって、その頭の半分ほどを…