大井川通信

大井川あたりの事ども

恐怖と事件

大荷物の怪人 vs. 読書怪人

以前利用者ともめた店を避けて、隣町のジョイフルに行く。 朝の6時半。いつも吉田さんとの勉強会で使っている店なので印象はいいし、何よりモーニングのおかずの盛りが、僕の近所のジョイフルとは全然ちがう。ほうれん草もひじきも二倍はあるだろう。トイレ…

ロータリーを駆ける怪人

半年ばかり前、こんなことがあった。朝の出勤時、大雨である。憂鬱な気分で歩いていると、駅の近くで、車が跳ね上げた水しぶきで下半身が水浸しになってしまった。駅のロータリーへの進入路(「東郷停車場線」という由緒ありげな正式名称)は車道も歩道も狭…

三億円事件の現場を歩く(事件の現場14)

三億円事件は実家の隣町の国分寺で起きたから、当時小学校1年生だった僕は、親から教えられたりして当時の現場を記憶している。ただし、現金輸送車のルートや犯人の逃走経路を実際に歩いたことはない。 早朝6時前、国分寺北口の富士そば(現金輸送車の出発…

影につかまれる

通勤の途中、駅前のスクランブル交差点を歩いているとき、いきなり、背後から抱き着かれて、左の二の腕をつかまれたような気がして、ぞっとした。 その瞬間、僕の右側をかすめて自転車が追い越していったのだが、その自転車本体の気配に驚いたわけではない。…

北新地ビル放火殺人事件(事件の現場13)

2021年12月17日に、大阪駅近くの大通り沿いのクリニック(心療内科・精神科)が放火されて27人が死亡した事件が起きた。犯人は、このクリニックに通院していた患者らしく、本人も死亡している。のちの報道では、亡くなった若い院長の人柄をしのぶ患者さんた…

『魔術師』 江戸川乱歩 1931

肩の力を抜いて、読書を楽しみたいと思って、乱歩の「通俗長編」の一冊を手にとった。創元推理文庫の乱歩シリーズの一冊。このシリーズは、雑誌連載当時の挿絵がふんだんに載せられていて、本文だけの文庫本とは印象が全く違う。昭和初期の挿絵には時代の空…

博多駅前ストーカー事件(事件の現場12)

マスコミの生々しい報道を見ていたせいもあって、この身近に起きた事件の現場を訪ねようという気持ちは起きなかった。週末、博多駅に寄ったのも本屋が目的であって、電車が駅に近づくまで、この事件のことを思い浮かべることもなかった。 駅を降りてスマホで…

ご近所トラブルを収束させる

11月の終わりに、妻が隣家の奥さんからケヤキの落ち葉のことで苦情を受けた。長男の幼稚園時代からの付き合いだけれども、感情が爆発したみたいな様子だったという。それを聞いて、何年もわたって相当不満をためてきたのではないかと想像できた。 妻も混乱…

『三億円事件』 一橋文哉 1999

2002年の新潮文庫版で読む。ながらく積読だった。 僕にとって、三億円事件は特別な事件だ。小学校1年生(7歳の誕生日の直前)に隣町で発生した事件で、全国的な大ニュースになったし、その後の捜査の進展状況も話題になった。偽白バイが現金輸送車をだまして…

『消された一家』 豊田正義 2005

副題は「北九州・連続監禁殺人事件」で、2009年の新潮文庫版で読む。 ドキュメントをまとめて読もうと思って、以前からの宿題だった本書を手にとったのだが、新年早々、憂鬱な読書になってしまった。 僕は、この監禁殺人事件の現場となったマンションと多少…

『裁かれた命』 堀川惠子 2011

実家近くの事件を扱っているドキュメントだから手に取ったが、想像以上のものだった。2015年の講談社文庫版で読了。 強盗殺人事件の現場は、国立駅から東に数百メートル歩いた小高い丘の上の、林を切り開いてつくった住宅地で、線路沿いともある。街が開けた…

『宿命』 原祐一 2021

「國松警察庁長官を狙撃した男・捜査完結」が副題で、2018年出版本の増補文庫化。オウム事件については、同時代を生きた人間として関心を持って見守ってきたが、警察庁長官狙撃事件については知識が乏しかった。2012年のNHKスペシャルの放送やその書籍化され…

隣家におこられる

僕の家の玄関先に問題のケヤキがある。この住宅団地で建築条件付きで敷地を買ったときに、住宅街を統一するために外構をそろえて、玄関先に同じシンボルツリーを植えるというのが決まっていた。 その時かかわった業者はすでに撤退したり倒産したりしている。…

財布紛失騒動

次男が昨晩から膝が痛いというので、かかりつけの整骨院につれていく。診療の間、モールの中にあるカフェで本を読んで待っていたが、次男が戻ってきた後も、荷物を置いたままドラッグストアにサポーターを買いに行ったりバタバタしていた。 家に戻って、少し…

台風がこわい

台風11号に続いて、台風14号がやってきた。こんどは、史上最強規模の勢力で上陸して、僕の住む地域をほぼ直撃する可能性が高いという。否が応でも緊張感がたかまる。 前回の台風の備えがそのままになっているところもあり、ゴミ箱などの家の周辺のモノを…

台風襲来

台風11号がやってきた。台風は夏から秋にかけての風物詩や年中行事みたいなものなのだが、その姿は少しずつ変わってきたのを感じる。 気象観測や予測の精度があがり、勢力や接近の時間までが事前にわかるようになったことが大きい。確実に発生が予見できる災…

ラフカディオ・ハーンのレンズ

時々、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲 1950-1904)の怪談が無性に読みたくなる。で、角川ソフィア文庫の池田雅之編訳による『新編 日本の怪談』を読んでみた。ハーンには『怪談』という著書があるが、それ以外からも大小の珠玉の怪談を集めて、テーマ別に…

関東大震災直後の映像を観る

今日は、関東大震災発生から99年目の日となる。地震直後の東京の被害や救援活動を写した貴重な動画がネットで公開されている。写真でしか見たことのない震災被害が比較的鮮明な映像で30分以上残っていて驚いた。 僕の父親は震災の翌年の3月に生まれているか…

『孤島の鬼』 江戸川乱歩 1930

乱歩の長編の中でも評価の高いこの作品を、僕はまだ学生の頃に読んだ記憶がある。恐ろしくて重苦しい作品という印象だけは強く残っている。なるほど恋人や友人のあっけない死や、たくさんのおどろおどろしい仕掛けがあって、若いころの僕には刺激が強すぎた…

犬鳴峠の怪

久しぶりに車で、犬鳴トンネルを抜ける街道を使う。妻の要望で久山町の植木屋に行った帰り、次男を職場に迎えに行こうということになったために、その最短の経路だったからだ。 犬鳴峠は、今では全国的に心霊スポットみたいな場所として著名だが、地元ではず…

新型コロナワクチンを接種する

8月末にステロイド剤の服用も終わり、医師の診断でも元の身体に戻ったということだったので、ようやく予約してコロナワクチンを接種する。地元の市では、すでに30代の順番に入っている。職場の同僚は、職域接種などで済ませている人が多く、ほとんどの人にな…

園児送迎バス放置事件(事件の現場11)

7月ごろ全国に衝撃を与えたこの事件は、少し離れた市で起きたものだが、次男のお世話になった特別支援学校の近くにあるので、すぐ近所の道を何度も通っている。 夏の暑い盛り、朝の送迎バスの中に5歳児を置き去りにして、午後まで放置してしまったという、と…

兄弟遺体遺棄事件(事件の現場10)

自宅から比較的近い場所で、全国ニュースになるような事件が続けて起きた。珍しく妻の方から、どんな場所で起きたのか見たいという。休日の半日を使って2つの現場をはしごすることになった。 一つは、発覚して間もない死体遺棄事件だ。市内の大きな住宅団地…

ハイフローセラピーについて

お世話になった病院から連絡があって、入院の個人負担分の請求書の準備ができたという。さっそく窓口に行って支払うと、領収書には、12頁にわたる診療明細書がついていて、入院中の治療の全貌がわかるものになっていた。 処置料の明細には、6月3日から7日ま…

退院一か月(クスリの効用)

退院して一か月。 この一か月は、めまぐるしく考え、振るまい、持ち物を片づけてきた。もともと考えることと書くことはセットであるという自覚があったので、つたない文章をこのブログに書きつけて来たのだが、深く進路を考えることの根底に、自分の持ち物と…

主治医の写真

一般病棟に移って数日後に、ようやく退院の許しがでて、初めて病棟の診察室に出向いて、主治医から検査結果の説明を受けることになった。白衣を着た主治医は、ごく普通の初老のお医者さんに見える。 初めて主治医に出会ったのは、病状が悪化してこの病院に救…

ホテルの窓を見上げる

コロナ感染症の治療で入院していた病院の周囲は、退院してすぐに歩いた。感染病棟の病室の窓や、一般病棟に移ってからの病室や廊下の窓を、入院中見下ろしていた風景の中に立って確認した。 一方、入院の前に缶詰めにされていたホテルの方は、退去して一か月…

温泉三昧

病院ではあちこちに点滴をさされたが、点滴を入れにくい血管らしく、看護師さんたちもみな苦労していた。ひどいかゆみで皮膚をかきむしったりもしているから、僕の腕には小さな傷がたくさんある。 それで、温泉に入って、傷をいやそうと考えた。幸い地元には…

病院の窓を見上げる

入院中、窓の向うの風景が救いになったという話を書いた。一般病棟で自由に歩き回れるようになってからは、廊下の突き当りの窓から見下ろす交差点付近の街並みが、特に印象深い。病院を出たら、あのあたりを歩こうといつも思っていた。 というわけで、退院後…

新型コロナウィルスに感染する ⑰(退院)

いよいよ待ちに待った退院の朝。いざその時になると、マリッジブルーではないけれども、手放しでは喜べない気持ちになる。献身的な治療やケアに身を任せていい立場を離れれば、世間の冷たい風にもさらされることになる。 例の病気の感染者に対しては、偏見や…