大井川通信

大井川あたりの事ども

教育

『ほんとうの道徳』 苫野一徳 2019

学校教育については、次から次へと批判者が現れて、一面的な観点や一方的な思い込みから、正論めいた意見をはく。 なるほど、学校には様々な問題があるだろう。それは、一人の人間を見ても、家族を見ても、地域や企業を見ても、社会や世界をながめても、およ…

鳥の鳴き声の紹介(厳選版)

子どもたちに、三種類の鳥の鳴き声を聞かせる。いずれも、このあたりで昼間から、大きな声で鳴いているものばかりだ。 まずは、ウグイス。ホーホケキョは有名だけれども、谷渡りという鳴き声(ケッキョ、ケッキョと激しい)もウグイスであることを話す。同じ…

鳥の声とともに(2019バージョン)

今年も、視覚の障害のある子どもたちに、実際の音源を使って、鳥の声の聞き分け方の話をした。身近な鳥で、今の季節に戸外で聞くことができるもの、鳥の暮らしや人間とのかかわりの多様さがわかるものを選びたい。昨年より少しバージョンアップ。 まず、キジ…

山猫と紳士とどちらが愚かか?

昔、小学校の授業の指導案で、宮沢賢治の童話『注文の多い料理店』を読ませるときに、「山猫と紳士とどちらが愚かか?」という問いをもとに議論させるというものを見て、びっくりしたことがある。山猫にだまされて裸になり食べられそうになる紳士たちは確か…

『たぬき学校』 今井誉次郎 1958

小学生の時、自分のおこづかいで買った記憶がある。懐かしくて、一度県立図書館で借りて読んだことがあったが、今回はネットの古書で手に入れることができた。 ポン先生は、いつもタヌキの子どもたちに漢字百字の書き取りの宿題を出している。ある日、優等生…

向山洋一氏の教師修行

向山洋一さん(1943-)は、教育技術法則化運動で名高い教師で、たくさんの著書を持っている。彼が新任当時、我流で始めた教師修行について書いているものを読んで、その内容が強く印象に残った。優秀な教師ならば、そのことの意味が即座にわかるのだろうが…

聖徳太子とプロ教師

学校の教員と接するようになって、驚くのはその技量の差である。まさにプロと呼べるような先生がいると同時に、素人同然の授業しかできないベテラン教員もいる。本来はすべて専門家であるはずの教員の世界の中で、「プロ教師」などという呼び名がリアリティ…

一者対多数のコミュニケーション

今年度から教育系の大学で専任講師をしている友人が地元に戻ったので、久しぶりに会って話をした。とびきり優秀な小学校教師だった彼は、大学という職場でも、新しい環境を楽しみながら、研究に教育にフル回転している。若い友人の活躍というのは、本当に気…

夜の運動会

子猫を飼い始めて一カ月。まだまだオーナーとしては初心者だ。生き物と一緒に暮らすのはほとんどはじめてだから、いろんな発見があって面白い。 毎晩のことなのだが、それまでぐたっとしていた猫が突然、何かが憑依したかのように覚醒して、暴れ出すときがあ…

『想像力のテキスト』 山口タオ(文)津川シンスケ(絵) 2003

ずいぶん前に図書館の新刊コーナーで借りて読んで、これは手元に置いておきたいと購入したもの。その時のカンは当たっていて、読み直すたびに啓発される。 60頁のうち、ほとんどが絵を使った解説になっている。実際の世界の広さや地球環境の姿を、具体的な…

日めくりをめくって

「皆様、明けましておめでとうございます。皆様も、新年に抱負を持たれたかと思います。私は、小さいことですが、毎日朝一番に日めくりカレンダーをめくることにしました。 日めくりには、その日のことわざが書かれています。今日は、『頭が動かないと尾が動…

いじめっ子と妻(その3)

次男は、二歳を過ぎても言葉が出なくて、幼稚園に入っても、園ではいつもお世話をしてくれる専任の先生の膝の上にチョコンと座っていた。小学校に入学後もしばらくは、クレヨンしんちゃんなどの好きなアニメのセリフを好き勝手にくりかえすことが多くて、友…

いじめっ子と妻(その2)

妻の小学校の高学年の時の担任は、新任の男の先生だった。ひどいいじめにあっていたとき、その担任の先生から、「お前は強いなあ」と言葉をかけられたことを覚えていて、それが救いになったという。先生がどういう文脈で声をかけたのかはわからないが、妻は…

いじめっ子と妻(その1)

風邪で体調が悪く昼間から寝ていると、妻が買い物から帰ってくる。少し興奮して、小学生に怒ってやったと言っている。 話を聞くと、小学3,4年生くらいのグループが下校中に、ある男の子が、一人の子に対して、「お前を今度から〇〇と呼んでやる」としきり…

基礎研究と体験活動

今年も、日本人のノーベル賞受賞者が誕生した。ひと昔前は、手放しで賞賛して、あげくにはアジアの諸国への優越感を振り回すような論調まであったが、ずいぶん冷静な受け止め方に変わってきたように思う。現在の受賞は、かつての研究の成果なのであり、目先…

ファミレスの自己組織化論

ある町の教育研究大会で、旧知の女性教師の公開授業を観る機会があった。会うのは、ほぼ20年ぶりになる。当時、ある事務所で働いていたとき、彼女は同じ係の臨時職員をしている教員の卵だった。 経緯はまるで覚えていないのだが、彼女と一度、二人だけの読書…

思いやる力

次男は、言葉を身に付けるのが遅く、軽度の知的障がいがある、ことになっている。しかし、相手の気持ちをおしはかって、相手のために行動する力は、とてもつよく、ふかい。 子どものころ、なじみの駄菓子屋が閉店した時に、おばさんに自分から感謝の手紙を渡…

例外的な少数者の思想

学校教育は、十把ひとからげに批判されることが多い。特に、その集団主義的で鈍感な部分が、知的に早熟な子どもたちにとっては耐え難いから、彼らにトラウマのような恨みをあたえてしまいがちだ。知的に早熟な子どもは、社会的にも知的にもエリートとなる可…

私と鳥とお年寄りと

先日、若い友人の教師が遊びにきてくれた。今、何をしているのか聞かれたので、お年寄りと話すようにしている、と答えた。その流れで、かなり適当な理屈だけど、こんな話をした。子どもはかわいい。子どもには未来がある。子どもは教えたことをタオルみたい…

『視線と「私」』 木村洋二 1995

保育園で、園児たちが口々に「見よって、見よって」と叫ぶ姿を見て、20年以上前に出版された、この本のことを思い出した。 僕みたいな独学者は、行き当たりばったりに本を読んでいく中で、自分が生きて考えていく中で、本当に役に立つ論理を見つけていく。…

タコウインナー、あるいは見立てるということ

保育園の園庭で、三歳くらいの女の子が、手のひらに、いくつもの小さな花弁を載せて、それを見せに来る。「タコういんなー」 赤い花弁を伏せた姿は、広がった花びらがタコの足のようで、なるほどタコ・ウインナーそっくりである。女の子の親は、ウインナーソ…

見よって!見よって!見よって!

保育園で、二歳から五歳までの園児たちと遊ぶ。広い園庭は草原となっており、里山の緑に抱かれているような素晴らしい環境だ。本当に久しぶりに幼児たちに接して、新鮮な気づきがあった。 昔、「異文化としての子ども」という本がよく読まれていたけれども、…

鳥の声とともに(おまけ)

鳥の声の話をしたのは、視覚障害のある子どもたちのためだったけれども、同席した大人から反響があった。 教員の卵のKさんに、子どもたちの反応を聞いてみたら、何より自分が驚いたという。カラスの鳴き声の違いに気づいていたが、2種類いるとは知らなかっ…

鳥の声とともに(つづき)

子どもたちと鳥の声で楽しんだあとに、視覚障害が専門の教育大学の先生と、そのことを立ち話する機会があった。 先生は、鳥の剥製も触らせたらよかったですね、とアドバイスしてくれた。なるほどそうかもしれない。しかし、僕が鳥に興味をもってから、実際に…

鳥の声とともに

視覚特別支援学校に通う子どもたちに話す機会があった。本当は、決められた原稿の通りに挨拶すればいいのだけれども、どうしてもやりたいことがあった。昨年、同じような機会に少し鳥の鳴き声の話をしたのだが、子どもたちに好評だったと、あとで教えてくれ…

教育学者という謎

人は誰でも、自分の体験から作り上げた「色メガネ」というものを持っている。僕の場合、教育学者の話はつまらない、というものがそれだ。 僕はたまたま、現場の教員や教育学者の話を聞く機会を多少もっている。学校の先生は、どの世界でもそうであるように、…

『アクティブラーニング』 小針誠 2018

今流行のアクティブラーニングについて、明治以降の教育史にさかのぼってルーツをさぐり、こまごまとした事実をとりあげて、要領よく整理してある。今になって、アクティブラーニングがことさら取り上げられる要因をあげて、それがもたらす効用の多くが幻想…

『学びとは何か』 今井むつみ 2016

一読して、著者がとても誠実で優秀な学者である、というのはまるで門外漢の僕にも感じられる。新書の入門書として、とてもていねいに、わかりやすく書かれている、というのもわかる。かかれている主張も、どうみても正しいものだ。 しかし、どうしたものだろ…

ホームとアウェイ

とても優秀な教員の友人がいる。教員仲間でも広く彼の力は知られているが、教師でない僕のような人間が話していても、彼の力が群を抜いているのはわかる。他の先生たちとどこが違うのだろう。ずっとそれを考えていた。 先生は、どちらかというと内弁慶の人が…

『逆転のボランティア』 工藤良 2004

昨年、著者が仲間と主催するイベントに出席した。非行や犯罪に走る少年たちの立ち直りの支援を、いろいろな立場の人間が取り組んでいこうという集まりのなかでの、著者の朴訥として熱意のこもった語りが印象に残った。 本書は、自分の生い立ちから、暴走族の…