大井川通信

大井川あたりの事ども

日々のこと

写真家藤原新也の話を聞く

世界遺産沖ノ島の写真展で、神社の宝物館に藤原新也が来館した。僕には、1983年の『東京漂流』のベストセラーで懐かしい名前。トークイベントでの藤原さんは、小柄でお洒落な老人といった風情だ。 古代人は眼で決めていたはずだから、写真家と共通している。…

結婚式で祝辞をのべる

職場の人の結婚式で、スピーチをした。ネタ探しから、原稿書きと推敲、読みの練習とずいぶんと時間をつかった。会場と同じくらいの広い場所で実際にスピーチしてみる。空間に意識を向けるのは、演劇ワークショップで習った手法だ。今回は新しい試みとして、…

あべこべのひと

20代の頃、東京の塾で同僚だった知人と会った。 知人は僕よりいくらか年長で、今年塾を定年退職したそうだ。それで再就職までの時間を利用して、実家の隣町に住むお姉さんの看病で二カ月ばかりこちらに滞在しているという。僕が今住んでいる地方が、たまたま…

寝具にくるまって

体調がすぐれなくて、寝具にくるまって休んでいる時に、ふとこんなことを考えた。 たとえば、圧倒的な権力や経済力を誇っている人物にしたって、あるいは、何かの分野で突出した才能を発揮して名声を勝ち得ている人間にしたって、一日に一度は、こうして寝具…

こんな夢をみた(その5)

正体不明の風邪に苦しんで、職場を休み、まる一日横になっているとき見た(悪)夢。 年末。職場ではあわただしく仕事をしている。僕の手元の分厚いノートには、仕事上の重要なメモが書かれているらしく、これで来年は頑張ろうと意気込んでいる。 独身の頃な…

LGBT(性的少数者)をめぐって

職場でLGBTについての研修会があった。こうした場で当時者の話を聞くのは何度目かである。そこでの、ざっくりした印象。 僕は80年代前半の学生の時に、東京郊外で、「障害者」自立生活運動とかかわりをもった。90年代以降は、被差別部落の運動と断続的にかか…

虹の足

通勤で川沿いの道を車で走っていると、にわかに雨が強くなる。すると正面に虹が見えたので、道路わきの神社の大きな駐車場に車をとめて、観察することにした。 はじめは右半分くらいしか見えていなかったのだが、いつのまにかうっすらときれいな半円を描いて…

メタ・コミュニティのような話

昔勤めていたのは、塾長が大学生の頃に仲間と始めたまだ若い塾だった。僕が入社した頃は、塾長は30歳を過ぎたくらいだったが、東京郊外に5教室ばかりあって、さらに教室を増やそうとしていた。教室ごとに専任講師が2名ほどと学生バイトの講師が多くいたと思…

写真を撮りましょうか?

家族連れで、観光地を歩いた。本当に久しぶりのことだ。子どもがなんとか仕上がるまでは、経済的にも、精神的にもそれどころではなかったので。 若い女性から、写真を撮りましょうか、と不意に声をかけられる。いや、大丈夫です、ととっさに答えてすれちがう…

新幹線の鼻づら

自分が漠然と感じていながら、とりたてて言葉にしていなかったことを、他の人から指摘されて感心する、ということがたまにある。ある会合で、怖いモノ、の話がでたときに、新幹線の先頭部分(正式にはノーズというのだろうか)が怖い、という若い女性がいた。…

傷を負うということ

数年前、地元の自治会の役員を引き受けたことがある。なり手がなくて、仕方なくしたことだが、自分が歩ける範囲に責任をもつ、という大井川歩きの原則には適ったことだと無理に納得していた。結果的には、旧集落の役員とも知り合いになれて、よい経験をした…

巨大魚の遡上

職場の昼休みに散歩していると、コンクリートで三面を固められた用水路の流れの底に、大きな魚の影を見つけた。鯉やナマズがいてもおかしくないので、まじまじと見つめると、ヒレが目立たないぬめっとした姿に、ナマズだろうと見当をつけた。しかしどこか違…

旧友の虚像と実像

20代の頃、東京の郊外の進学塾で、3年ばかり専任講師をしていたことがある。その時の同僚と、30年ぶりに会うことになった。待ち合わせの小さな駅のロータリーに車をとめても、それらしい人影はない。5分ほど待ってから電話をすると、さっきから階段の脇に立…

ファミレスあるある?

週末、妻に電話を入れる。「今週やっと終わったから、帰りジョイフルに寄ってきていい?」「いいよ」 ジョイフルでは、いつでもドリンクバー付きのモーニングが注文できる。ワンコインでモーニングを注文し、ドリンクバーを飲み継ぎながら、好きな本を読んだ…

ある経営者の信条

次男は、特別支援学校を卒業して、昨年春からある介護施設に勤務している。グループ会社を統括する社長は、地元では有名な起業家だ。入社式には妻が参観したのだが、隣に座った社長が気さくに声をかけてくれて、自社を好意的に取材しているビジネス書を直接…

50銭の思い出

ピカピカの50銭銀貨を手に入れて、うれしかったものだから、妻に自慢してみる。銀貨を手に取った妻は、こんな思い出を話し出す。初めて聞く話。 子どもの頃、博多の下町には、いろんなものをリアカーで売りに来た。オキュウトや豆、豆腐、それにさお竹や金魚…

古銭を買う

僕には、ストックブック一冊分のささやかな古銭のコレクションがある。小学生の頃通った「国立スタンプ」で、わずかな小遣いで買いあつめたもの。その後、立川の中武デパートの古銭屋で、思い出したように手を出したもの。それに、母方の実家のおじさんから…

天体望遠鏡の話

実家の片付けをしていたら、押し入れの奥に細長い段ボールが立てかけてあるのを見つけた。すっかり忘れていたが、小学生の時に買った天体望遠鏡である。 アポロ計画をはじめとする宇宙開発にも影響されたのだろうが、当時の子どもたちの間で、天文学や天体観…

9.11の夜

どうということのない日常の出来事が、いつまでも新鮮に思い出されるということはあるが、やはり社会的に大きな事件は、はっきり記憶に残るものだ。 2001年の当時は、仕事が忙しく、深夜の帰宅が当たり前だった。長男が小学校に入学し、次男は2歳に。頭を床…

9469060522

亡くなった父親は、ちょっとした小物などでも、目立たない場所に購入日を書き込む習慣があった。数字の羅列なのだが、まずは西暦の下二桁。つぎに元号、そのあとに月日がつづく。 しかし、今回、小さな収納箱の引き出しの裏に、表題の長い数字の並びを見つけ…

思いやる力

次男は、言葉を身に付けるのが遅く、軽度の知的障がいがある、ことになっている。しかし、相手の気持ちをおしはかって、相手のために行動する力は、とてもつよく、ふかい。 子どものころ、なじみの駄菓子屋が閉店した時に、おばさんに自分から感謝の手紙を渡…

読書会のあとで

現代詩を扱う本をレポートする読書会が終わった。あらためて思ったことが三つ。 まずは、特定の世代以降、やはり現代詩が読まれなくなっているということ。 次に、自分なりの気づきや発見がありさえすれば、どんな分野でも、なんとか語り通すことができると…

コロッケとメンチカツ

読書会で林芙美子の短編を読んだ。やはり話題は「貧乏」のことに。そこで、自分の貧乏エピソードを話してみた。 子どもの頃、夕食のおかずなどでコロッケを食べることはあっても、メンチカツを食べる機会はあまりなかった。もしかしたら経済的な事情というよ…

平山鉱業所の話(その2)

津屋崎海岸に面して建つ旧旅館に住む友人がいる。その旧旅館の別館を老朽化のために取り壊すことになった。友人は、現代美術にかかわりを持つ人だったから、その前に旧旅館全体を会場にして、現代美術展をおこないたい。それも半年くらいの期間を使って、会…

平山鉱業所の話(その1)

新刊の『絵はがきの大日本帝国』(二松啓紀著 平凡社新書)をながめていたら、産業発展をあつかった章で、炭鉱関連の二枚の絵葉書の画像があった。ただ二枚とも平山鉱業所のものなのが、少し意外な感じがした。全国には、はるかに規模が大きくて有名な炭鉱が…

神隠しをめぐって

山口県で2歳の幼児が行方不明になった、というニュースが連日報道されている。家族にとってはとんでもない事件だが、このネタが全国ニュースで報じられるのはどうかと思っていた。ただ、田舎で2日間も見つからないのは、たぶんもうダメだろうと。 それが今…

天保通宝の来歴

少し前から、お財布に天保通宝を入れてある。なぜそんなことを思いついたのか、はっきりと覚えていない。ただ、生まれた時代が違っても、同じコインということで、小銭入れの中でよくなじんでいるのに驚いている。 レジの時に、500円玉の代わりに出しても良…

車椅子からの目線

数日前に、右足のくるぶしに違和感を覚えた。アキレス腱をかくんと伸ばしてしまったような。そのあと二日間は、さほど無理している感覚もなく散歩などしていたが、昨日から足を引きずるようになって、夜にはまったく歩けなくなった。 今朝からは痛くてかかと…

理髪店とあめ玉

僕が数年前から行っている理髪店は、理髪用の椅子が十台以上並んでいるけれど、先客がいることはめったにない。おそらく全盛時代は、何人も雇って羽振りがよかったのだろうが、今は年取った夫婦だけでやっている。70歳を超したかというご主人は、決まって「…

千灯明と「がめの葉饅頭」

ハツヨさんの故郷、平等寺の地蔵堂で千灯明があると聞いたので、かけつける。まだ明るかったので、ハツヨさんの生家の脇の路地を上り、高台のため池ごしに、ミロク山の姿に手をあわせる。僕は、この村を舞台にしてハツヨさんの生い立ちを絵本にするつもりだ…