大井川通信

大井川あたりの事ども

虫のいろいろ

寒風にゆれる女郎蜘蛛

以前、電灯近くのジョロウグモの巣に、一面コバエのような小さな虫がくっついているのを見たことがあった。明かりに集まったコバエが捕まってしまったのだろう。しかしこれでは、巣の存在が一目瞭然だ。すると主であるジョロウグモが、その一つ一つを口でく…

ジョウビタキとカトリヤンマ

夕方、夫婦で久しぶりに散歩をする。妻が、和歌神社にお礼参りにいくというので付き合ったのだ。前回、心配でお願いしていた検査結果が良かったから、スーパーで買った日本酒の小瓶をお供えするらしい。和歌神社の社殿の前でふたりそろってお参りしたが、妻…

天邪鬼と女郎蜘蛛

ポーの短編小説のなかに、「天邪鬼」(the perverse)を人間の本質とみる視点があることを書いた。われわれは、そうしてはいけないから、かえってそれをしてしまうのだ。ポーは小動物をいじめてしまうことを、その実例にあげている。 僕も自然観察者を気取り…

カメムシの侵入

庭のケヤキの木には、だいぶ以前から、毎年小さなカメムシが発生する。緑色ではなく、グレーの体で、幼虫の姿は、宇宙人のようにつるっとしている。我が家では見慣れた種類なのだが、手元の図鑑にはのっていない。 今頃の季節には、冬越しのために家に侵入し…

光速の竜とアサギマダラ

新幹線のホームに、南からやってきたN700系が停車している。例の恐竜のような長い鼻先を突き出して。 ふと架線の上に目をやると、ヒラヒラと飛ぶ蝶が目につく。白地に黒いシマの羽に、紅のアクセントが目をひく。南下の長い長い旅の途中のアサギマダラだ。 …

脱力系のカトリヤンマ

日の射さない林の中を、大柄のトンボが飛んでいる。見た目はヤンマのようだが、ハグロトンボみたいに、はかなげに羽をばたつかせて飛ぶ。みしみしと大男が歩くようなオニヤンマの力強さや、高速ギンヤンマの自由自在な飛行とは比べるべくもない。 近くの枝に…

ナガサキアゲハの幻惑

黒いアゲハが優雅に飛ぶ姿には目を奪われるが、残念ながら種類を見分けることができない、と以前に書いた。カモ類の識別ができないのと同じで、見かけがどれも似ているのだ。しかし、いつまでそんなことではすまされまいと、わかりやすい特徴から頭に入れて…

セミの死によう

生き様(ざま)という言葉はよく使われるけれども自分は嫌いだ、という誰かの文章を読んだことがある。たしかに、力みかえった誇張が感じられるし、音の響きもうつくしくはない。同じ漢字でも、「生きよう」と読んだ方が、やさしく、軽い語感となる。 ここで…

ツクツクホウシの聞きなし

以前にも書いたが、僕の特技の中に、ツクツクホウシの鳴きまねができるというのがある。小学校のある夏の自由研究で、ツクツクホウシの鳴き方の調査をしたために、すっかり身についてしまったのだ。 ある時、得意になって鳴きまねを披露しているときに、誰か…

『虫のいろいろ』 尾崎一雄 1948

最近、ようやく虫のカテゴリーを立ち上げて、名前を「虫のいろいろ」にしたので、本家の小説を手にとってみた。短編だが、一部分は読んだ記憶がある。試験問題や副読本で部分的に読んだことがあったのだろうか。 ところで、有名な作品だが、あまり良くなかっ…

アオスジアゲハの羽ばたき

黒いアゲハの大きくて悠然と飛ぶ姿は、優美でドキッとさせられる。しかし、それがクロアゲハなのか、カラスアゲハなのか、はたまたナガサキアゲハなのか、さっぱり特定できない。実物の特徴を頭に入れて、あとで図鑑で確かめることもあるのだが、すっきりと…

サラダと尺取虫

海が見えるイタリアンのお店に、夫婦でランチを食べに行く。正直な話、そんなことはめったにない、いやそれどころか記憶にすらない。二階に上がると、眼下は砂浜で、視界いっぱいに海が広がっている。建物はかなり古びているが、海に向かうカウンター席に並…

お宝映像!

ゴミ出しから戻ってきた妻が、玄関で「お宝映像!お宝映像!」と声をあげる。出勤前で忙しかったけれど、笑顔に誘われて道に出ると、ゴミ捨て場の網に、タマムシがしがみついていた。光沢のある緑色の身体が美しい。自宅前で見かけることはめったにないから…

君はハルゼミを知っているか

セミは、郊外育ちの昆虫好きの元少年にとって、一番身近な長年の友人である。だから、セミに関するネタは山ほどある。 昔の東京では、アブラゼミが主力だったが、今ではミンミンゼミも平気で街中で鳴くこと。西日本では、クマゼミの天下だが、生息域が東京に…

ゲンゴロウの狡知

ほとんどの水生昆虫は、空気中から酸素をとりいれて呼吸している。水中に身をひそめているゲンゴロウも、頻繁に水面に上がってきて、素早くおしりを水面に突き出し「息つぎ」の仕草を見せる。 面白いのは、空気をため込む場所である。固い前羽と背中の間にす…

ゲンゴロウの躍動

ゲンゴロウというと、開発によって生息できる環境が少なくなり絶滅寸前になったひ弱な昆虫、というイメージがあるかもしれない。しかし、ハイイロゲンゴロウだけは、別の種と思えるほどのたくましさがある。 まず、その泳ぎ方だ。舵の壊れた暴走モーターボー…

ゲンゴロウの誘惑

今の住宅団地に引っ越して20年になる。はじめはJRの駅やバイパスの方ばかり向いて暮らしていた。高台から反対に降りた側にある、里山のふもとの小さな集落のことなどまったく気にかけていなかった。そういう住民が今でもほとんどだろう。僕がこの土地に目…

『東京少年昆虫図鑑』 泉麻人(文) 安永一正(絵) 2001

泉麻人は、僕より5歳ほど年長だ。高度成長期の東京で5年の差というのは大きい。ただし23区内に育った泉よりも、はるか西の郊外育ちの僕の方が自然に恵まれていたとはいえるだろう。いずれにしろ、虫をめぐる共通の体験が、当事者ならではの重箱の隅をつ…

旅するアサギマダラ

この秋はじめてアサギマダラを見た。松林を抜けるあたりの道の先に、一匹の大型の蝶が見えたが、フワフワ浮かぶような飛び方がアゲハとは違う。近づくと、白をベースに黒い縁取りと朱色が美しいアサギマダラで、ゆっくり林の上に消えていくのを、うっとりと…

ハラビロカマキリの闘い(その3)

ハラビロカミキリの洗脳状態での不名誉な姿を記事にしてしまったので、彼の本領である真剣勝負を記録しておくことにしよう。 四、五年まえのことだ。自宅の玄関を入ろうとすると、地面から、ボリボリ、ボリボリ、という音が聞こえて来た。あわてて下を見ると…

ハラビロカマキリの闘い(その2)

翌日浜辺を歩くと、また別の場所で、海水に濡れた緑色のハラビロカマキリを見つけた。障害物のないきれいな遠浅の砂浜で、カマキリは思い切り自由にふるまえるし、こちら側も変な先入観なく観察することができた。 カマキリは、まず、海に向かって真っすぐに…

ハラビロカマキリの闘い

砂浜を歩いていると、波打ち際を歩くカマキリが目に止まった。緑色が鮮やかで、腹が平べったいハラビロカマキリだ。なぎとはいえ外海だから、カマキリの左側からは、大きな波音が響き、時には波が届いて、カマキリの足もとをさらったりする。明らかに海の側…

オオスカシバ

数日前、自宅の駐車場で、オオスカシバの姿を見た。すぐに隣家の庭に消えてしまったが、透明な羽に黄色の太い胴体が目に残った。高速で羽ばたいてホバリング(空中停止)もできるから、蜂のようにみえるがスズメ蛾の仲間だ。 実家の庭には、クチナシの垣根が…

オニヤンマ

七月になってから猛暑が続き、早朝でないととても散歩などできなくなった。朝6時過ぎに家を出て、クロスミ様の鎮座する里山をこえて、モチヤマの集落に入る。 小川沿いの田舎道で、いきなり大柄な誰かに出くわしたと思ったら、オニヤンマだった。 八木重吉…