大井川通信

大井川あたりの事ども

言葉ノート

魔術の再生

見田宗介は、近著『現代社会はどこに向かうか』の中で、脱高度成長期の若者の精神変容のデータを扱っている。そこで目を引くのが、「お守り・お札を信じる」、「あの世、来世を信じる」、「奇跡を信じる」などの一見非合理的な回答のポイントが、1973年から…

球はふしぎな幾何学である。無限であり、有限である。

球面はどこまでいっても際限はないが、それでもひとつの「閉域」である、と見田宗介は近著『現代社会はどこに向かうか』の中で、続ける。 だから、生産と消費の無限拡大のグローバルシステムは、地球表面上での障壁を消し去るかに見えるが、そこで最終的な有…

文学的半生

小説を読む読書会で、事前に提出する課題のなかに「文学に興味を持っていなかったら、あなたの人生や性格は、今とどのように違っていたと思いますか」という質問があった。 参加者は、読書好きの若い人が多くて、文学のおかげで、視野が広くなったり、考えた…

バベルの塔

マウス型ロボットが/高速戦車に追われて/砂嵐の砂漠を疾走する 戦車がロケットを発射すると/マウスは敵もろとも/砂を噴き上げて自爆する あと一台・・・ 薄暗い塔の中/バビル2世は/大型モニターを見上げて/防衛システムに次々と指令を出す/すでに/…

どんどんかわっていくよね、かわらんと困るから

JRの車両で、向かいに座った老夫婦が、車窓風景をながめながらつぶやいた言葉。 40年前、50年前の思い出話をしながら、このあたりは田んぼだったのに、住宅街になってしまった、という。それを嘆くという風ではなくて、「変わらんと困る」と言い添えたの…

俺だって社長なんだよ

駅前の南口と北口を結ぶ、広い通路で、自転車にまたがった中年の男が、初老の警備員に食ってかかっている。どうやら、自転車の運転を制止されたのが、気に入らないらしい。気が小さいくせに、おっちょこちょいで正義の味方を気取りたがる僕は、二人の間に、…

なるように、する(原田一言詩抄)

久しぶりに、大井村の賢人原田さんのお店に顔をだす。原田さんは、2年前から幼稚園で用務員をしているから、朝晩に保護者の車の誘導の仕事があり、店も不在がちだ。今はイモ畑を作るように頼まれているという。幼稚園の敷地のはずれの新しい小屋のことを聞…

受け入れる勁(つよ)さ

二カ月くらい前に、安部さんから、「玉乃井塾」を一度開きたいと声がかかった。 安部文範さんと知り合ったのは、今から20年くらい前のことになる。「福岡水平塾」という差別を考えるグループの月例会だった。差別問題の元活動家が中心だったが、メンバーの…

生死巌頭に立在すべきなり

日付を見ると、2001年6月29日とあるが、朝日新聞夕刊の「一語一会」というコーナーに、今村仁司先生のエッセイが掲載された。仏教哲学者清沢満之の言葉を取り上げたもので、清沢の原文は次のように続く。「独立者は、生死巌頭(しょうじがんとう)に立在すべ…

千差万別

村瀬孝生さんによると、時間と空間の見当を徐々に失っていくのは、人にとってごく自然な過程ということになるが、ブログの文章を書くというのは、ささやかなそれへの抵抗という側面がある。住み慣れた住居が、その人の日常生活の時間と空間を血肉化したもの…

生きているそのあいだ、なるたけ多くの「終わり」に触れておく

作家いしいしんじの言葉。鷲田清一の新聞連載「折々のことば」で知ったもの。 僕の実家は、動物を飼うことがなかった。庭で捕まえたセキセイインコを飼っていたことがあるくらいだ。そのセキセイインコも、僕が外でカゴをあやまって落としてしまい、逃げられ…

ばびぶべぼ言葉の謎

ネットで検索すると、ばびぶべぼ語、もしくは、ばび語とも呼ばれているようだ。 「こんにちは」なら、「こぼ・んぶ・にび・ちび・わば」というように、一音節ごとにバ行の同じ段(母音)の音を入れて話す。国語辞典の解説では、はさみ言葉と呼ばれて、江戸時…

「きゃりーぱみゅぱみゅ」の言い方

6、7年前にきゃりーぱみゅぱみゅが歌手で大ブレイクした頃、名前をかまずに言う裏技がラジオなどで話題になっていた。その時、自分が気に入った二つの方法を覚えて、機会を見つけては得意になって人に吹聴していた。さすがに今では旬を過ぎているが、秘蔵…

正直、このまち何もないよね

オリンピックで活躍した選手が拠点の地元にもどって、口にした感謝の思い。ふと耳にして、言葉の深さに驚く。彼女は、こんなふうに続ける。 このまちにいても絶対夢はかなわないと思っていました。だけど今は、ここにいなかったら夢はかなわなかったなと思っ…

みてみて、おにく、やけた

近くの商業施設の休憩用のスペースに立ち寄ると、テーブルを囲んで、若いお母さんたちが、食事とおしゃべりをしている。窓際のガラスには、大きな観葉植物が置いてあるのだが、二歳か三歳くらいの女の子が二人、鉢の前にちょこんと並んで正座している。鉢の…

人は必ず死ぬものだ、と村瀬さんは言った

30年間、介護の仕事で老いとむきあって、わかったことは、と村瀬さんは口を開く。 人は自分の思い通りにならない、ということです。そうして、人は必ず死にます。死ぬ前に人は、時間と空間の見当を失いがちになる。しかし、人間は自分の住み慣れた建物を血…

事ども、のこと

このブログの説明に、大井川あたりの事ども、と書いている。大井川と言っても、あの大井川ではなく、ネットの検索でも出てこないような、小さな河川の支流のことだ。そのあたりの事ども。しかし、事など、でいいところ、なぜこんな気取った言い回しをしてし…

虫の目、鳥の目、魚の目

虫の目と鳥の目の対比を始めて知ったのは、高校生のとき読んだ小田実の対談本だったと思う。小田は石原慎太郎に言う、お前は鳥の目だけれども、オレは虫の目でいくよ。それ以来、虫の目と鳥の目は、ミクロとマクロに一般化されて、議論には必要十分な武器で…

人知れず 私 (原田一言詩抄)

大井村の賢人原田さんは、荒れ果てた民家を借りて、何年もかかってほとんど一人で改修して、古民家カフェの体裁を整えた。僕が四年ほど前にたまたま入店したのは、そのリニューアルオープン日だった。早朝の新聞配達で店の運営を支えていた原田さんは、幼稚…

駄洒落を言ったの誰じゃ(その3)

ある日、近所のため池をのぞいていて、とんでもない発見をした。ため池は、養魚池としても使われていて、色とりどりの鯉が、気持ちよさそうに泳いでいる。しかし、これはとんでもなく矛盾した事態ではないか。 池の鯉・・・イケとコイ・・・行けと来い!? …

だじゃれを言ったの、じゃ、だ〜れ?

そのダジャレ名人は、当時東京郊外の団地にある塾で教室長をしていた。商店街の古い木造の二階屋を教室にしたもので、隣のパン屋のおやじが、塾生の自転車が店の前をふさいでいると怒鳴り込んでくるような環境だった。長身で洋楽好きのダジャレ名人は、学生…

だじゃれを言ったの、だれじゃ?

今では人に自慢できる才能などまるでないけれども、かつてはダジャレを作ることには自信があった。ダジャレ自体は、昔からそれほど評価の高いものではなかったろうが、ある時期から親父ギャグと言われてさげすまれるようになり、今ではうっかり若い人に言お…