大井川通信

大井川あたりの事ども

仮想の友と歩く

駅から自宅までの帰り道は同じ道を歩くことが多いが、途中で病院の敷地内を通り抜けることもある。病院は岡の上にあって、いつも歩く道はその周囲を迂回しているので、多少ショートカットにはなるのだが、階段を上り、坂を下らないといけない。樹木も多く公…

『宗教哲学骸骨』 清沢満之 1892

「日本の名著」の現代語訳で、久しぶりに清沢の『宗教哲学骸骨』を読み直してみる。初めて読んだのは、今村先生による現代語訳の文庫本だった。こんな風に宗教を、というか世界を語ることができるのかと驚いた記憶がある。 今読んでも、その簡潔でスキのない…

結婚式に招待される

以前の職場の部下の結婚式に招待される。スピーチや乾杯の音頭などの役割のない結婚式は気楽だが、その分緊張感がなくて物足りなくもある。仕事関係で結婚式に呼ばれるなどというのもおそらくこれが最後だろう。そもそも若い人も減り、結婚自体も減り、フォ…

『メメンとモリ』 ヨシタケシンスケ 2023

絵本で近頃の収穫は、なんといってもヨシタケシンスケだ。書店で平積みになっている何冊かをめくって、いいなと思った。 昨年末の中学生のビブリオバトルでバトラーの女の子が取り上げて、それに対して大学生のボランティアがヨシタケ作品を好きだといって質…

奇蹟を理解する

人生の中で「奇蹟」と思えることは、超自然的な現象というものより、得難い人との出会いだろう。誰でも友達を6人たどれば、全世界の人に行きつくという現象(スモールワールド現象、6次の隔たり)こそ、その奇蹟の客観的な表れである。 多くの人は、日常で…

馬券を当てる?

春の競馬シーズンまでは日にちがあるが、それでも重賞クラスのレースは関心を持ってみている。この時期には短期免許で新しい外国人ジョッキー短期免許で来日するから、その騎乗ぶりも楽しみ。 昨年の注目株はカザフスタン出身のムルザバエフジョッキーだった…

手帳を紛失する(「置忘れ対策」について)

もう10年以上前のことだが、いろいろな場所にモノを置き忘れることが続いた。たまたま以前に大きな記憶障害を経験したことがあって、記憶についてはある程度勉強していた。正確な名称は忘れたが、短期記憶の中で、自分のふるまいを無意識に短時間保持して置…

『在床懺悔録』 清沢満之 1895

清沢満之が一般の読書界に広く知られるようになったのは中央公論社の日本の名著シリーズの第43巻(1970)で鈴木大拙とともにとりあげられたのがきっかけだと聞いているが、そのペーパーバックス版(1984)を僕は手元に持っている。 ぱらぱらとながめていて…

こんな夢をみた(展示会と司法試験)

乱暴者の元同僚Kさんが、華やかな展示会の会場に乗り込んできた。ホテルの一階のホールのような場所だった。展示会に恨みをもつKさんが、暴力で会場を破壊しようとしたのだ。僕はその場にはいたが第三者のような扱いで、乱入したKさんとも普通に言葉を交…

伸ばすと曲がる野菜はな-んだ?

職場に生命保険の営業の人が出入りしていて、来るときは毎日小さな手作りの新聞(メモ?)を配っている人もいる。その中になそなぞコーナーがあって、毎日ひとつなぞなぞが載っている。答は翌日に発表される。今では、ネットになぞなぞのサイトなどがあるか…

『近代日本と親鸞』 安冨信哉 2011

著者の安冨信哉(1944-2017)が亡くなったあと、2018年に真宗文庫として再刊されたもの。 以前に末木文美士の論文集『日本の近代仏教』を読んだが、今回の本は、あくまで浄土真宗大谷派の「近代教学の伝統」の視点から明治大正期の社会の中での仏教の動きを…

増税メガネの戦い

妻は小物をつくりながら、いつもYouTubeの政治系チャンネルを聞いている。もともと新聞もニュースも世間の事はなんの興味もなかったのに、動画を見出してからは、こんなものにはまっている。単純明快な理屈で、誰かを目の敵にするという論理が娯楽になるのだ…

それぞれの戦い

新年になって一か月が経とうとしている。宇部へのプチ家出から始まった一年は、僕にとって幸先のいいものではなかったが、家族もそれぞれに難局を迎えているようだ。 長男は、転職活動で内定をもらい今のレアメタルの会社を辞めることになりそうだ。初めの転…

ヒラトモ様に初詣

昨年11月に風邪をひき始めてから、地元をほとんど歩かなくなった。例年なら年明けには地元の神様に初詣にでかけて日本酒の小瓶を供えるのだが、今年はずるずる遅くなってしまった。体調の問題だけでなく、身近な人間関係のストレス、休日の予定が増えたこと…

ホシゴイに出会う

バードウォッチャーを自称して、一時はその記事も多かったが、近頃はすっかり鳥のことも書かなくなった。思い返しても、この冬は街中でイソヒヨドリのメスの姿を見かけたくらいだ。あとミヤマガラスの群にも会えた。しかし、フィールドを歩き始めさえすれば…

酒を飲まないという人生

吉田さんとの例月の勉強会。僕はよいテーマが思いつかず、最近のブログから新語についての記事をまとめてレジュメにした。「おっさんビジネス用語」「食い尽くし系」「時間を溶かす」「押し活」「宗教2世」など。 新語が浮上する背景には、価値観の変化があ…

『世界がわかる宗教社会学入門』 橋爪大三郎 2001

20年前以上に出版された宗教社会学の入門書を、今回ようやく読了した。何度か手にとっていたし、2010年に読み始めた日付が書き込まれているが、その時は挫折してしまったのだろう。この間、廃棄本にしようと思ったことさえある。すでに文庫化され安価に手に…

『自負と偏見のイギリス文化』 新井潤美 2008

副題が「J・オースティンの世界」の岩波新書。オースティンの人物と作品の解説、その時代背景の説明、それが長く愛読され特に近年において人気が再燃している事情などを解説する。オースティンの入門書といっていい。 僕はまだ二作品しか読んでいないが、そ…

行橋詣で(2024年1月)

小雨の中早朝から家を出て、前回のようなドタバタはなく、午前9時過ぎに教会に着く。先生はちょうどご先祖の奥津城(墓所)にお参りにいこうとしていたところだった。地元では一番美味しい「宗像最中」を持参。井手先生は物々交換とつぶやいて、別のお菓子…

こんな夢をみた(女優)

女優の何某さんといっしょにカフェに入る。緊張している僕に、思ったことをそのまま口にして会話したらいいとアドバイスしてくれるが、両隣に、サラリーマン風の客と友達同士の女性客がいたので、結局何も話せなかった。 彼女の知り合いも店に来てしまったの…

平知様発見10年/諸星大二郎降臨5年

雨の土曜日。妻を整骨院に送り迎えしたり、ショッピングモールのカフェで本を読んだりと、平凡で平和な休日の一日を過ごす。 ただし、今日1月20日は、僕には大切な記念日だ。 ちょうど10年前の今日、僕は地元の里山の頂上付近で「幻の神様」だったヒラ…

『ふしぎなキリスト教』 橋爪大三郎・大澤真幸 2011

橋爪も大澤も僕が若いころからの社会学のスターだが、近年出版される入門書の類はどうも感心できないことが多かった。しかし、該博な知識と視野の広さが要求される分野では、二人から学ばなければいけないことが多いと、『ゆかいな仏教』に引き続いて気づか…

こんな夢をみた(出張)

出張にでた。 主張先は遠方で、僕は線路沿いを歩いて帰っていた。一緒の職場の仲間も少し先を歩いているらしい。線路わきに巨石があるところで追いついた。僕があとから巨石に登っているときに、彼らはまた先に出発してしまう。 線路を歩いているときに、い…

『ノーサンガー・アビー』 ジェイン・オースティン 1817

『自負と偏見』が面白かったので、オースティンの6つの長編小説を読んでみようと思い、一番薄くて読みやすそうな一冊を手に取った。22、3歳の時書かれて、27歳の頃推敲後完成されたものの出版の機会に恵まれず、ようやく没後に本になったそうだ。 残念なが…

年賀状を卒業する

定年になってから年賀状を辞めようとしていたが、今年はいよいよ自分の分の年賀状は一通も出さなかった。年末年始の年賀状の制作と対応は、長い間僕には頭の痛い問題だっただけに感慨深い。いったい誰に出すべきなのか、どんな内容がふさわしいのか、その辺…

「東京ケーキ」と再会する

東京から九州に住まいを移して30年以上が経ったが、風土や習慣などの違いに気づくことが多かった。お祭りの縁日で、「東京ケーキ」というお菓子が売られているのも、東京ではまったく見たことのない屋台だけに印象に残った。 地元の人には子どもの頃からなじ…

藤原定家を読む

読書会で、コレクション日本歌人選(笠間書院)の藤原定家(1162-1241)を読む。精選された50首に見開きページで解説がついているからわかりやすいのだが、なんとも難解で技巧的な歌が多くて、読み進めるのに閉口した。 平安時代は400年近く続き、その…

愚かさについて

毎日記事を書くことのメリットは、自分の愚かさに触れざるを得なくなることだろう。ふつうわざわざ何か書くときは、自分がいかに優れているかを自慢したいという下心があるのは仕方がない。毎日書いていると、自分では得意になっているつもりでも、底の浅さ…

高度成長時代の「原風景」

子どもの頃、初めて見た景色(原風景)は以前からずっとあったものだと思い込んでしまう。だから子供心に、本物の日本国総理大臣は佐藤栄作総理であり、本物の米大統領はニクソン大統領、プロ野球の優勝チームはいつまでも巨人軍であるという思い込みがあっ…

こんな夢をみた(実家の建物)

実家の建物を父親といっしょに見上げている。「実家」といっても、場所以外は、僕にはまったく見慣れない建物だ。 建物の西側は空き地で雑木林が広がっている。その向こうに4階建ての社宅が見えている。(これはかつての姿。ただし空き地はとうの昔につぶさ…