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大井川通信

大井川あたりの事ども

理髪店

辞令交付の前日、髪が伸びているのが気になって、夕方、職場近くの「床屋」に思い切って入ってみた。髪を切られるのが苦手で、昔ながらの理髪店でそれも行きつけのところでないとだめだ。職場の地名が店名になっているのも何かの記念になるだろうと、扉を開くと、閑古鳥が鳴いていると思いきや、町はずれの店なのに意外に明るく活気がある。客が多いというわけでなく、家族が多いのだとすぐに気づいた。

髪を切るのはもう老人といっていい主人、髪を洗うのは奥さん、顔を剃るのは娘さん、奥さんと同年配の女性も手伝っていて、孫たちも遊びから帰ってくる。

腕もサービスもよく、もっと早くから来ておけばよかったと後悔した。しかし、この町で働くことはこの先ないだろう。外に出るともう薄暗い。お店の隣には神社があって、鳥居の前で、仕事を終えた娘さんが子供二人を遊ばせている。こちらに気づくと、小さく会釈してくれた。