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大井川通信

大井川あたりの事ども

自転車で

父は退職まで、隣町の立川の工場に自転車で通っていた。僕が家を出た後のことになるが、府中の再就職先まで、8年間やはり自転車で通勤したようだ。小学校の頃は、月に一度几帳面な父と一緒に、自転車をピカピカに掃除をするのが習慣だった。

父が定年になった年齢となって、僕の勤務先が住居と同じ市内となり、天気の良い日、思い切って自転車で通勤してみることにした。長男が就職して、彼の自転車が一台空いたという事情もある。おそらく購入してから一度も掃除していない錆びだらけの自転車のペダルをこいで、川沿いをひた走る。父は、立川までおよそ3キロ、府中までは4キロの道のりを住宅街を抜けて走っていた。僕は7キロ近く走らないといけない。上空にはトビが舞い、川面にミサゴが急降下するような、桃源郷のような風景の中を。