大井川通信

大井川あたりの事ども

ガクエン退屈男 永井豪 1971

子どもの頃読んで、忘れがたかった漫画。そう話したら、友人が貸してくれた。

1960年代後半の学生の反乱が、70年代に入り、あらゆる学校の広がり、教師が武器をとって学生を鎮圧し、学生ゲリラたちが解放のために戦う時代となる。文字通りの殺しあいであり、美少女や怪人が入り乱れての、永井豪らしい展開だ。子供向けということもあって、当時語られていたはずのイデオロギーの問題には触れられない。

この漫画が派手に予言する通りにはならなかったが、子どもたちは、校内暴力、学級崩壊、不登校学力低下、という形で学校制度に対する無意識の反乱を広げている。学校外では、テロや戦争等、大義なき暴力の亢進はおさまらない。

学生ゲリラのリーダーの早乙女門土は、正義など関係なく戦いを自己目的化する人間として描かれる。ライバルの身堂竜馬は、女性のような外見をもち、クローンという出自のため自らのアイデンティティの回復が戦いの動機となる。二人の人物像は、今でも新鮮で魅力的だ。