大井川通信

大井川あたりの事ども

「秋の祈」高村光太郎 1914

秋は喨喨(りょうりょう)と空に鳴り/空は水色、鳥が飛び/魂いななき/清浄の水こころに流れ/こころ眼をあけ/童子となる

多端紛雑の過去は眼の前に横はり/血脈をわれに送る/秋の日を浴びてわれは静かにありとある此(これ)を見る/地中の営みをみづから祝福し/わが一生の道程を胸せまつて思ひながめ/奮然としていのる/いのる言葉を知らず/涙いでて/光にうたれ/木の葉の散りしくを見/獣(けだもの)の嬉々として奔(はし)るを見/飛ぶ雲と風に吹かれる庭前の草とを見/かくの如き因果歴歴の律を見て/こころは強い恩愛を感じ/又止みがたい責(せめ)を思い/堪へがたく/よろこびとさびしさとおそろしさとに跪(ひざまづ)く/いのる言葉を知らず/ただわれは空を仰いでいのる/空は水色/秋は喨喨と空に鳴る

 

高村光太郎、103年前の秋10月の絶唱。十代で出会って以来、年齢とともに輝きを増す、祈りの詩。今年も暗記をメンテナンスして、人のいない林道で思いっきり暗唱しよう。

そういえば、最近、東京の博物館と美術館で光太郎の彫刻を偶然二つ観た。手と、ナマズ

  

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