大井川通信

大井川あたりの事ども

樋井川村から大井村へ

近所の大規模住宅団地で、今、ニュータウンのリノベーションの動きが起きている。先月から毎回ゲストを招いて「郊外暮らしの再成塾」が開催されていて、今月が株式会社樋井川村の村長を名乗る吉浦隆紀さんだった。所有と市場をベースに、おおきなうねりの発火点となっている吉浦さん。おなじく不可視の村を舞台にしながら、「歩く」という無所有、非市場の営みで、いったい何ができるのか。身が引き締まる思い。以下は、二次会での僕の感想コメント。

 

「今回の吉浦さんの話は、衝撃的だった。吉浦さんが、老朽化したマンションを満室にして経済的にペイさせようと知恵を絞るところから出発して、人に喜ばれる空間が生まれ、人々がつながり、それが地域へと波及する様は壮観だ。現状では赤字のテラスの存在も、長期投資の観点から肯定される。そういうクールなビジネスの言葉と、『九州王国』を目指す理念とが、吉浦さんのなかで無理なく両立している。
僕は長く公務員をしているので、理念が空洞化し、人々の営みが空回りしてしまう場面の渦中にいることも多かった。吉浦さんの話を聞くと、本当に大切なもの、必要なものはこんな場面で産まれるのか、という感動すら覚える。
最後に昔話を。かつては市場や所有をひとしなみに悪として、それを超えることに希望を見出す言葉がはびこっていた。しかし多くの犠牲を払って、その言葉は失効する。柴田さんによると、まちづくりの新しい主役は、若い不動産オーナーたちだそうだ。所有を開くことで、人々の主体性やつながりを迎え入れる。新しい希望は、吉浦さんたちの一歩から始まっているのかもしれない」