大井川通信

大井川あたりの事ども

庭の恐怖

実家の庭の隅に小さな小屋があって、その裏に回ると、隣の敷地の板塀との狭いすき間から、道の脇に立つ木製の電柱を見上げることができた。電柱の上部には、変圧器みたいなものがついていて、丸形のガイシがついていた。幼い僕には、それがバケモノの丸い目玉に思えたらしい。肝試しのように、庭の隅にその一本足のオバケを見上げに行って、驚いて逃げて戻ったりした記憶がある。

小屋は取り壊され、木製の電柱も取り除かれた。実家の記憶も縁遠くなっている。しかし今でも、狭く湿っぽい路地に一人いて、無機的に光る白い目から見下ろされているような感覚に襲われることがある。