大井川通信

大井川あたりの事ども

水平線上に突起をつくれ

数年前、ある高校の卒業式に出席した。その学校の校訓は「水平線上に突起をつくれ」という一風変わったもので、校歌を歌う前にも、まず「突起をつくれ!」と大声で気合を入れる。由来を調べると、大正時代の初代校長の言葉のようだ。100年前には、今聞くのとは違った「ハイカラ」な語感をもっていたのだろう。自立とか個性とかいう抽象的な言葉よりも、突起という具体物の方がイメージが突き刺さる。それを水平線と対比させるスケールの大きさは、コスモポリタニズムの香りがする。大正デモクラシーの理想主義の影響があるのだろうか。

ただ、この校訓が僕に忘れがたくなったのは、ネットで、一人の卒業生の短文を見つけたからだ。(今探しても、もうその文章は見当たらないけれど)彼女は、高校生活を懐かしみながら、自分のたよりない現在の生活を振り返って、こんなふうにつぶやく。

「水平線  突起をつくるは  いつの日か」

とてもいい返句だ。こんな風に母校と卒業生との対話をとりもつ素敵な校訓は、めったにないと思う。