大井川通信

大井川あたりの事ども

『小さい林業で稼ぐコツ』農文協編 2017

農家の仕事なら、ふだん目にするから、なんとなく想像できる。林業となると、見当もつかなかったが、近所の里山に出入りするようになると、植林された林や、伐倒の跡など、林業の痕跡を意外に身近に見ることができた。しかし、今、山が荒れているとよく耳にするし、林業では儲からないのではないか。そんな時に、図書館の新着コーナーで手にした本。

本書は、「自伐型林業」への入門書だ。今は木材価格は下がっているが、人に任せずに、自分で切って運び出し出荷まですれば、そこそこの利益が得られる。薪にして売ったり、間伐材バイオマス発電のチップ用で売ったりもできるが、造材技術(枝を払い寸法を測り「玉切り」する)を身につけ「丸太」にすれば高値が狙える。一斉に伐採する「皆伐」と違い、工夫をこらしながらの「択伐」で経営の手腕が発揮できるし、何より自分の山を手入れしてきれいにする喜びがあるという。しかしこのためには、軽トラが入れる作業道の整備が不可欠とのことだが、僕の里山歩きは、この作業道のお世話になっていたのだ。

この本をながめている時、偶然、遠方の「原木市場」に見学に行くことになった。集荷された大量の丸太が、選木機にかけられて、直径と品質ごとに仕分けられた後、セリの単位で積み上げられている。近頃は中国等からの需要もあるそうだ。単価が1㎥あたりであること、大径木がかえって安くなることなど様々なことを教えられる。林業が具体的に動いているイメージが得られたのはありがたかった。

この本は、農家と林家の兼業はもちろん、中山間地域を担う多分野の業種(例えば福祉)の参入を期待してしめくくられている。地域の自立の一手段ととらえる視点がおもしろかった。