大井川通信

大井川あたりの事ども

閉校する短大で

町にある短大が、来春で閉校するという。公開講座があったので、都合のつく日程で申し込んでみた。初めて入るキャンパスは駅近くの高台にあって、小規模だが周囲の自然も映えて感じがいい。

廃校となる学校の卒業生は、どんな思いを抱くのだろうか。古い感覚かもしれないけれど、進学もいわば新しい共同体への帰属であり、それは自分よりも確かなもの、永続するものを求めてのことだったはずた。

予想に反して、さっそうと登壇した講師(柏木翔氏)は、若手のバリバリの観光学の研究者であり、10人弱の受講者を前にして、観光をテーマに情報量豊富でわかりやすく、知的刺激に満ちた話をした。観光客増がもたらす弊害についての日本政府の備えの甘さの指摘や、オーストラリアとの観光政策の比較を通じた日本への提言、さらには地域の観光戦略についての話を、実際のデータに基づいて行う。事前には経済やビジネス関連の話と分かっていたので、それほど期待はしていなかったのだが、東浩紀の『観光客の哲学』もこうしたリアルな認識とセットになって、批評的な意味をもつのだろうと思える内容だった。

講師の話を聞きながら、その規模や評価とは別に、大学という場所の知的な資源としての貴重さにも思い至る。