大井川通信

大井川あたりの事ども

ヒラトモ様のご褒美

少し遅くなったけれども、天気がいいので、ヒラトモ様の里山に初詣に行く。山道は、両側から竹が倒れていて、少し歩きづらくなっている。道が途切れ、きつい山の斜面を登っているとき、ひらひら歩く襟巻のようなイタチとすれちがう。

ヒラトモ様の石のホコラは、初めて訪れた四年前に比べると、お参りする人が途絶えたのか、落ち葉も吹き込んで荒れてしまった感じだ。軍手をもってきていたので、ホコラの掃除をして、昨年の梅酒を下げて、日本酒の小瓶をお供えする。ホコラの周りに散乱した大小の木の根をきれいに並べて立てかけておく。これは、戦時中ヒラトモ様が戦勝祈願の神様だった時に、お参りの人たちが木剣を献上していた伝統を引き継ぐ大切なものだ。日本の近代を里山の上から見つめてきたこの神様のことは、きちんと残しておきたいとあらためて思う。誰もいない山頂の木々に響き渡るように、「ヒラトモ様、大井の里の人々の暮らしをお守りください」と大きな声をお祈りしてから、山を降りる。

帰りに、ヒラトモさんの登り口の脇で畑をしている吉田さんの家に寄る。四年前お参りの時にたまたま声をかけて知り合いになってからのお付き合いだ。ご主人(ひろちゃん)の子ども時代のエピソードを夫婦で手作り絵本にして届けたこともある。ひろちゃんは、ちょうど玄界灘で釣ってきた魚のうろこをとっているところで、大きなクロを二匹と手作りキムチをお土産に持たせてくれた。まるで、ヒラトモ様からのご褒美みたいなお魚を下げて、家に戻る。