大井川通信

大井川あたりの事ども

「かっちぇて」という場所

 片山健太さんと薫子さんのご夫婦が主催する「かっちぇて」(長崎弁で仲間に入れて、という意味)というたまり場について、ワークショップで二人から話を聞くことができた。

「かっちぇて」は、長崎の坂の街にある古民家で、ボロボロな状態で彼らが買い取って、改修しながら自宅として使い、「子どものたまり場・大人のはなす場」として開放している。子どもたちとのリフォーム工事からはじめて、参加費無料、申込不要、プログラム・タイムスケジュールなし、年齢制限・学区制限なし、障碍の有無を問わないという方針で運営しているそうだ。

この場所自体も面白いと思ったが、何よりこころ魅かれたのは、活動していく上での、二人の考え方やふるまい方のていねいさだ。たとえば、健太さんの地元長崎で物件を探すときに、二人は半年間足で探したという。結局見つからずにネットに頼って今の建物を見つけたそうだが。また地域に等身大の姿で自分たちを受け入れてもらうために、新聞の取材は断っているそうだ。マスコミのかっこうのネタだろうし、普通なら喜んで取材に応じるような気がする。二人のふるまいには、よく考えられた自主ルールがあるみたいだ。

二人は、長野県で山村留学を主催するNPOの職員として出会ったそうだが、そこで学んだことと、そこでは出来なかったことを、ていねいに今の活動につなげていることが見て取れる。どんなにいい事業でも高額な参加費を払える恵まれた子どもたちしか参加できない。そうでない子どもたちに届かせるために、「かっちぇて」を子どもが通える街中に開いて、参加費や申込を不要としたという。

子どもたちは何もない場所でも自分たちの遊びをみつけ、自分たちなりにルールを作って、今現在の活動にのめりこむ。二人も、長崎の坂の街の空き家で新しい活動を始めて、徹底して話し合いながら、自分たちがやりたいことを実現している。この年末年始も、「今やっていることは本当に自分たちのやりたいことなのか」という話し合いをしたそうだ。

どの会で話してもお金(経済)と保険(安全)について質問が多いとのことだが、今回もそんな話もあった。それはどこか、子どもに対するわけしりな大人の紋切り型の声かけにも聞こえる。支援の必要な子どもに届いているのか、という質問もあったけれども、なにより「かっちぇて」という場所を必要としているのは、大人の二人なのだろうと思えた。

大人と子どもの区別を絶対化したうえで、子どもについてだけあれこれ注文をつけることで事態はかわらないだろう。現状がまずいというなら、まず自分から動かないといけない。何もない場所で、新しい行為を始めているのか。率直に話し合って、自分たちのルールを作っているのか。しっかりと考えて、人とていねいにかかわっているのか。二人からは、そんな問いを突き付けられた気がする。