大井川通信

大井川あたりの事ども

春一番とガビチョウ

昼間、車道の脇を歩いていたら、ボヤっと赤いものがゆっくり飛んできてズボンに止まる。のぞきこむと、ナナホシテントウだった。手に取ると、思ったよりはるかに小さい。ただ暖かい日差しを受けて、濡れたように光っている。指を立てると先端まで登って飛び立つ習性があると思っていたので、しばらく横断中みたいに手を挙げて歩いてみたのだが、いっこうに飛ばないので、道端の草の上に置く。

途中、駐車場で、猿回しのおじさんが稽古をしていて、ときどき無造作に猿の頭をこつんとたたいたりしている。(虐待にならないのだろうか)

何日か前に、この地方に春一番が吹いた。いつの間にか、土色の畑が芽吹き、一面に黄緑の筋が広がっている。黄蝶が一匹、飛ぶ姿を見かける。

知人から、鳥の鳴き声を問い合わせるメールが届く。日中やぶの中で、様々な音色で騒がしく鳴くガビチョウだ。昔、大井村の原田さんからも、春になると大声で鳴くその鳥の正体を聞かれたことがある。(原田さんは当時、明け方に新聞配達をしていたので、朝うるさくて眠れないと嘆いていた)

ガビチョウの目の周りは、白いペンキで数字の6(ただし横向き)を描いたみたいになっている。あの数字の眼鏡ごしに、春ははっきり見えているのだろう。