大井川通信

大井川あたりの事ども

ばびぶべぼ言葉の謎

ネットで検索すると、ばびぶべぼ語、もしくは、ばび語とも呼ばれているようだ。

「こんにちは」なら、「こぼ・んぶ・にび・ちび・わば」というように、一音節ごとにバ行の同じ段(母音)の音を入れて話す。国語辞典の解説では、はさみ言葉と呼ばれて、江戸時代の遊郭で使われるようになった隠語のことで、当時はカ行の音をはさんでいたそうだ。少なくとも今の中年世代の子ども時代にある程度の流行があり、7年ほど前、テレビの人気番組で紹介されたことで、今の若い人たちにもある程度知られているようだ。おそらくブームの有無にかかわらず、言葉遊びの一種として連綿と受け継がれてきたものなのだろう。これだけのことがさっとわかって、長年の疑問が解けてしまった。ネットの力はすごい。

東京郊外の公立中学のあるクラスで、70年代半ばにこの言葉が爆発的に流行っていたのは、まぎれもない事実だ。女子を中心に、教室でこの言葉が飛び交っていて、使えない人間は疎外感を味わうほどだったと思う。僕は、50音表を「あば・いび・うぶ・えべ・おぼ・かば・きび・・・」というように繰り返し練習して、マスターした。

話せるようになると、不思議と難なく聞き分けられるようになる。また、初めて聞く人はたいていチンプンカンプンだが、中にはすぐに聞き取れる耳のいい人もいる。また若い頃いったん話せるようになると、何年放っておいてもその能力は失われない。これって、他の語学と同じだ。

こうして、ばびぶべぼ言葉の披露と、そのエピソードやえせ語学理論の開陳は、僕の鉄板ネタとなった。しかし、今までこの言葉を使える人はおろか、知識がある人にさえめったに会った記憶がない。だから、相当限定的な知識や技術だろうという感触があったのだが、それ以上調べようがなかったのだ。

ただし、「蜂が飛ぶ」の歌詞の言葉の間に、すべてルを入れるという替え歌の方は、ずっと広く知られている。「ぶるんぶるんぶるん、はるちるがるとるぶる・・」と歌うものだ。 ところで僕は、これにヒントを得て、ばびぶべぼ言葉で「どんぐりころころ」を歌いきるというオリジナル技を開発して、ここぞという時に披露している。