大井川通信

大井川あたりの事ども

ミサゴと謎の魚ダツ

すっかり春の海だ。ここは外海だけれども、今日は波も穏やかで「ひねもすのたりのたり」という風情だ。僕はウニの仲間の殻を集めているのだが、この季節には、不気味な宇宙人の頭骨のようなヒラタブンブクや、丸くて薄いカシパンの殻が大量に打ち上げられることがあって楽しい。

今日も河口付近の浜辺に、二羽のミサゴが、時にホバリングを交えながら大胆に飛び回って、心が躍る。海を見に来ている人も多いのだが、ミサゴの姿に注目している人は見当たらない。なぜだろうか。一つには、同じくらいの大きさのトビが、普通に見られるせいかもしれない。しかし白いし、海にダイブするし。すると、細長くしなやかな翼が大型のカモメ類にも似ていることに気づく。海辺では、カモメもありふれた鳥だ。異なる種でも、同じような生活をしていると、きっと姿も似てしまうのだろう。

ふと、目の前の浅瀬にミサゴが飛び込むと、足もとに何かをつかんで跳びあがった。細長いウミヘビのような魚だ。銀色に輝く身体は1メートルくらいはありそうだ。身をくねらせて暴れている。なにより口元がワニのように長く裂けて、鋭くとがっている。それがミサゴの身体に直撃したのだろうか、たまらず魚を水面に落としてしまった。

昔の怪獣映画のワンシーンのような、迫力のある場面だった。ラドン対宇宙怪獣といったところか。あとで図鑑で調べると、その細長くワニのような口をもった魚はダツというらしい。釣り好きの知人に聞くと、エサの小魚を追って浅瀬に来ることもあるそうだが、不味いので釣っても捨ててしまうそうだ。ネットで見ると、ミサゴがダツをつかまえる動画がたくさんアップされている。思ったほど珍しい組み合わせではないようで、少しガッカリしてしまった。