大井川通信

大井川あたりの事ども

一流の人

職場に行く途中に、大きな神社と小さな博物館がある。その博物館の館長さんは、そうそうたる経歴の考古学の学者だ。大学を退職後、いくつかの大きな博物館を経て、ここの館長を務めている。引き受けていただいたときには、地元の人たちは大喜びだったと聞いている。今年で80歳だそうだが、年齢をまったく感じさせない。

朝、通勤の途中に車で通りかかると、バスを降りて神社に向かう館長の姿を見かけることがある。毎朝神社へ参拝したあと、他の職員と同じように八時半に出勤しているようだ。おそらく週に何日か遅い時間に顔を出すだけでも十分な役職のはずである。何事かを成し遂げる人というのは、やはり日ごろの姿勢が違う。

僕の大学時代の恩師は、もともとは経済学の出身だが、ヨーロッパの現代思想の研究で多くの業績を残した人だった。後年、仏教の研究に転じて何冊も本を出している。晩年死期を悟ると、一年かけて研究の集大成となる社会哲学の大著を書き上げたうえで、この世を去った。勤務校では、正月三が日を除いて、毎日早朝から夜遅くまで研究室にこもって勉強していたという「伝説」が残っている。

一流の人の華やかな才能と活躍の陰には、徹底して継続するという習慣があるのだと思う。