大井川通信

大井川あたりの事ども

イソヒヨドリの弾道

国道沿いの駐車場に車を停めていると、黒い影が、前方の上空からまっすぐに飛んできて、見る見る大きくなって、頭をかすめる。とっさに振り向くと、そのままの浅い角度で、少し先の自動車の下のあたりに「着弾」した。

イソヒヨドリだ。そっと近づいてのぞきこむと、全身濃紺で、腹のあたりだけ濃い赤のオスが地面をはねている。もう少し明るい青と赤なら目立つのに、ちょっと目には、黒っぽい鳥に見える。もともと海辺に住むせいか、ウエットスーツを着用したような、ぬめっとした質感だ。海辺の岩場に近い環境のために、アスファルトとビルの街中に進出して、元気に暮らしている。きっと潮風と海鳴りに負けないじょうぶな喉で、とてもきれいで大きなさえずりをビルの谷間に響かせる。

僕が好きなのは、その直線的な飛び方だ。すこし太めの身体に短い翼と尾羽。あまり羽ばたきを感じさせずに、砲弾のように滑空する。今までも、街角で何度かハッとさせられてきた。だから、今回の「襲撃」にも、すぐにイソヒヨドリとわかったのだ。

鳥たちの生活と僕の生活が不意に交差する場所。そこで僕は、彼らと挨拶を交わし、ひそかに励ましあう。