以前、仕事で使った本。必要があって、ざっと再読してみた。
トルストイの小説に、「幸せな家庭はどれもみな同じようにみえるが、不幸な家族にはそれぞれの不幸な形がある」という有名な言葉がある。しかし、著者によると、全国の行き詰っているホテル・旅館の「不幸な形」は「どれもみな同じ」であり、だからこそ再生のための有効な処方箋がある、という。確実な対処法があるからこそ、短期間での再建が可能というわけだ。
その「不幸な形」とは、ざっとこんなものだ。経営者と現場、各部門の間で情報共有ができていない。食材の棚卸ができておらず、仕入れに無駄が多くて、原価率が跳ね上がっている。エージェントによる低価格ツアーの引き受けや、土産物販売などの過去のビジネスモデルに引きずられて、収益性が極端に低くなっている。
そうすると、対処法は、情報の共有化と、仕入れの改善による原価率の引き下げ、収益が見込めるビジネスモデルへの転換ということになる。著者のような経験のあるコンサルタントならば、即座に有効なメスを入れることができるのだろう。
ところで、 まったくの余談になるが、なぜ家族の「不幸な形」は様々なのに、ホテル等の「不幸の形」は一様なのだろうか。それは、家族の目的と幸せは、ただ存在することにあるのに、企業体の存在意義は、社会から求められて収益を上げることにあるからだろう。収益に失敗するポイントは、同業種ではほぼ同一になる。しかし、家族のあり方にほころびが生じる点は、家族に応じて無数にあるというわけだ。