大井川通信

大井川あたりの事ども

氏神とキビタキ

縁があって、とある氏神のお祭りに参列した。社は、小山の頂上にあって、林で囲まれた野外の境内でお祭りはとり行われた。大きな神社からきた狩衣の神職が、祝詞をあげたり、お祓いをしたりする。その間、参列者は、若い巫女さんの指示で、頭をさげたり、玉ぐしを奉納したり。

気がつくと、林からは、キビタキのさえずりがずっと聞こえている。はじめはヒヨドリと勘違いしたくらい、にぎやかな声だ。キビタキも、お祭りにあわせてめずらしく華やいだ気分になっているのだろうか。

キビタキは、ツバメからひと月ばかり遅れて、南国からやってくる。ツバメとはちがい、住まいは暗い林のなかだが、この地方では、ある程度の規模の林では、めずらしくはない鳥だ。ただし、黒とオレンジの目を奪うような可憐な姿を目にする機会は多くはない。

何より好きなのは、そのさえずりだ。歌の名手の鳥は、手慣れた節回しを上手に繰り返すものだが、キビタキはまるで違う。節回しは安定せずに、たどたどしく、寂しげに鳴く。ピッピ、ピッピ、ピピヨ、ピッピキ、ピッピキ、ピピキ・・・

幼い子どもの笛の練習、というのが、一番しっくりくるイメージだ。初夏の林には、キビタキの笛の手習いがよく似合っている。