大井川通信

大井川あたりの事ども

学の道

今村先生は、晩年、清澤満之の著作との出会いを通じて、仏教の研究にも取り組むようになった。清澤満之の全集の編集委員を務めたし、清澤関連で3冊を上梓し、最後の出版は親鸞論だった。その中で、新しい人との出会いも多くあったようだ。ネットを見ても、印象深い思い出を語っている人がいるので、引用させていただく。

 

私には忘れることのできない先生の言葉があります。「ひとたび矛盾や存在という言葉を使ってしまったら、もう自分が何を思おうと、それは学の道に入っているということなのです。それを自覚することが重要です」・・・私がたとえ未熟でありながらも、これからも学の道を歩み続けようと決意したのは、この言葉を聞いたときでした。この先生の声はこれからも消えることはないでしょう。(「先生の声」親鸞仏教センター嘱託研究員 田村晃徳)

 

僕がわずかに知る範囲でも、先生は、むしろやんちゃといっていいようなキャラクターと親しみやすい風貌で、重厚な思想家という雰囲気ではなかったと思う。また、膨大な知識と論理の人だったから、親切に人を「学の道」に導くような教育者でもなかった。ただし、「先生の声」には、思考することの魅力を直に伝えて、人を考えることに誘うところが確かにあった。僕も、今でも、何事かを考えようとするとき、先生の言葉に支えられているのを感じることがある。