日付を見ると、2001年6月29日とあるが、朝日新聞夕刊の「一語一会」というコーナーに、今村仁司先生のエッセイが掲載された。仏教哲学者清沢満之の言葉を取り上げたもので、清沢の原文は次のように続く。「独立者は、生死巌頭(しょうじがんとう)に立在すべきなり。殺戮餓死固(もと)より覚悟の事たるべきなり。若(も)し衣食あらば之(これ)を受用すべし。尽くれば従容餓死すべきなり」
「これは仏教者清沢が無限の境地にたち、しかも激流のごとき現世を生き抜くときの覚悟を示す言葉である・・・それは厳しすぎる言葉だが、また強い激励を与えてくれもする」
今村先生が闘病しながら最期まで仕事を続けたときにも、おそらくこの言葉が座右にあったに違いない。
記事は、カラーの挿絵付きの瀟洒な仕上がりで、先生の文章も調子の高い、力のこもったものだ。当時、父親もたまたまこの記事を読んでいて、帰省した時、切り抜きを渡してくれたのも忘れられない。息子の学生時代の恩師の名前を覚えてくれていたのだろう。