大井川通信

大井川あたりの事ども

俺だって社長なんだよ

駅前の南口と北口を結ぶ、広い通路で、自転車にまたがった中年の男が、初老の警備員に食ってかかっている。どうやら、自転車の運転を制止されたのが、気に入らないらしい。気が小さいくせに、おっちょこちょいで正義の味方を気取りたがる僕は、二人の間に、胸をそらして立ちはだかる。どうしました?   

警備員の説明に、わざとらしく強めの声で、ここは自転車が運転禁止なんですね、と納得のふりをする。軽装の男性は、まだ不服そうだったが、タイトルのセリフを吐いて、立ち去っていった。

おそらく警備員は安全を確認した上でだろうが、運転中、いきなり腕をつかまれたことが、「社長」には子ども扱いされたようで腹に据えかねたのだろう。

はた目にはこっけいなようだが、何かのプライドを支えにして生きているのは、誰もが同じことだ。そして、他者の微妙な所作の違いで、天に昇るような気持ちになったり、地べたに突き落とされたりもする。やっかいだが、これはこれでわかりやすい。

安全地帯から人にあれこれおせっかいを出して、いい気になる人間の方が、むしろタチが悪いのかもしれない。