大井川通信

大井川あたりの事ども

バベルの塔

マウス型ロボットが/高速戦車に追われて/砂嵐の砂漠を疾走する

戦車がロケットを発射すると/マウスは敵もろとも/砂を噴き上げて自爆する

 あと一台・・・

薄暗い塔の中/バビル2世は/大型モニターを見上げて/防衛システムに次々と指令を出す/すでに/立ち並ぶコンピューターや計器のあちこちから/炎と煙が上がっている

少年は/かかりつけの医院の待合室で/少年チャンピオンのページを閉じた/ヒーローの戦いが/いつ終わるのかもわからないまま

昨晩/横山光輝が/寝タバコの煙に包まれて/力つきた/(半身がすでに不自由だったという)/畳の上には/消火用のマウスロボットが二台/むなしく走り回っていて

夜が更ける/誰もいない寝室で/僕は小型のモニターをのぞき込んで/主を失った/バベルの塔と交信する           (「バベルの塔」)

 

以前、横山光輝の訃報を聞いた時に、追悼の気持ちで書いたものを修正した。

横山光輝(1934-2004)が描く漫画の主人公は、僕のヒーローだった。とくに鉄人28号が典型的な、丸い胴体から四本の手足が伸びた形のロボットが、何より強そうでかっこいい。ガンダム以降の精巧なメカのようなロボットを見慣れている目には、なんとも旧時代の産物に見えるだろうが。