大井川通信

大井川あたりの事ども

ムジナの霊が現れて今いるムジナに舞いを教える(貉の生態研究⑤)

【身振りの模倣】

70年以上前、大井の村人がおこなったという戦勝祈願にならって、古式にのっとり(この時ばかりは)自転車に乗って、和歌神社、摩利支天、宮地嶽神社、金毘羅様、田島様と「五社参り」を敢行する。

かつての木剣の代わりに「木の根」が献納されている石のホコラの平知(ヒラトモ)様に、新年、日本酒の小瓶を献上してみる。あるいは、平家物語の知盛の最期の節を読み上げてみる。

 

※大井川歩きでは、原則として「車輪」に頼らない。しかし、戦争中も、自転車で回ったという五社参りでは、20キロ余りの道のりを自転車を走らせた。すると不思議なことに、出征兵士の無事を真剣に祈る気持ちが乗り移ってくる。

「五社参り」は男がおこない、婦人会では近場の「三社参り」(和歌神社、摩利支天、平知様)をおこなっていたと教えてくれた吉田茂三さんも、先年亡くなったと聞いた。

平知様は、もとは無名の古墓だが、明治以降、名高い平知盛の墓であるという風評がひろまる。当時の村人に思いをはせて、「見るべき程の事は見つ、今は自害せん」という知盛の言葉を、誰もいない里山に響かせる。すると、孤独な魂が、たしかに慰められるような気がするのだ。