大井川通信

大井川あたりの事ども

車椅子からの目線

数日前に、右足のくるぶしに違和感を覚えた。アキレス腱をかくんと伸ばしてしまったような。そのあと二日間は、さほど無理している感覚もなく散歩などしていたが、昨日から足を引きずるようになって、夜にはまったく歩けなくなった。

今朝からは痛くてかかとを地面につけることもできないので、苦労して行きつけの整形外科にたどりつく。考えてみれば、半年ばかり前にも左足の膝が痛くなって通院した。その時と同様、初老の医師は、あきれたように歩きすぎだという。どうやら近年のウォーキングブームに異論を持っているようだ。

大井川歩きを標榜している以上、歩けないのは困る。こんなことが続くようでは、体重を10キロくらい落とさなくては、と真剣に考える。松葉杖を借りて車で帰る途中、大型スーパーに寄る。常備された車椅子で、店内を自由に見て回れるからだ。店内には、殺人的な猛暑を逃れたお年寄りや子連れが多い。フードコートで昼食をとってから、僕も時間をつぶす。

車椅子に乗ると、何十センチか視線が低くなる。さらに見慣れない姿はちびっ子たちの注目をひく。まるで子どもたちの世界に紛れ込んだような不思議な感覚を味わった。

ふだんは品ぞろえが貧弱だからと足をとめないスーパーの書店にも、時間をかける。背の低い書棚の実用書が、目の前でアピールするのだ。

手品の入門書か。専門メーカーのタネを買うようになる前は、こんな本をよく読んでいたな。でもこんな本で教わった手品が今でも、どこでも人を驚かせる鉄板ネタになっている。剣道の戦術の入門書? 実践的に試合に勝つための方法が書いてある。対戦の相手の気持ちを見抜くコツとか。昔はこんな本はなかった。ルールと基本動作の入門書はあったけれど。だから試合とかは無我夢中で自己流にやるしかなかった。当時こんな本があったらよかったのに、と苦労した中学校の剣道部時代を思い出してしまった。