大井川通信

大井川あたりの事ども

天保通宝の来歴

少し前から、お財布に天保通宝を入れてある。なぜそんなことを思いついたのか、はっきりと覚えていない。ただ、生まれた時代が違っても、同じコインということで、小銭入れの中でよくなじんでいるのに驚いている。

レジの時に、500円玉の代わりに出しても良さそうな気さえする。さすがにそれはしないが、職場でお弁当代の支払いのときに若い職員にふざけて出したら、心底驚かれた。百円玉を二枚並べたよりも大きい楕円形の分厚い体躯は、コインの王者の貫禄がある。どうりで、子どもの頃あこがれたはずだ。

この天保通宝を手に入れた時のことはよく覚えている。(ほんのひと月前の事情は忘れているのに) 南武線谷保駅近くの踏切の前に、「国立スタンプ」という古銭と切手を扱う店があった。そこの棚にこの天保通宝があったのだが、当時たしか350円で、それは小学生だった僕の一カ月のお小遣いくらいの値段だった。両親の許可をもらって、家族で、谷保の神社や田んぼの方に散歩に行くついでに、購入したのだ。明るい谷保の自然の中を、ウキウキした気持ちで歩いたことをよく覚えている。

その後、大人になってもう少し高価な古銭に手を出したりもしたが、この天保通宝ほど思い出が刻まれた大切な古銭はない。おかげで、近ごろ少し金運も上昇したような。