以前にも書いたが、僕の特技の中に、ツクツクホウシの鳴きまねができるというのがある。小学校のある夏の自由研究で、ツクツクホウシの鳴き方の調査をしたために、すっかり身についてしまったのだ。
ある時、得意になって鳴きまねを披露しているときに、誰かから、ツクツクホウシが鳴くのは夏の終わりだと指摘されて、びくっとなった。確かに、家の近所でもツクツクホウシが鳴きだすのはお盆過ぎだ。今年もまだ、クマゼミとアブラゼミばかりで、ほとんど耳にしていない。小学生だった僕は、夏休みの終わりに駆け込みで研究を思い立ったのだろう。あまり自慢できることでもないな、と気づいたのだ。
ところで、ツクツクホウシの聞きなしだが、泉麻人の本に見つけて驚いたのだが、その後、小説家の梶井基次郎が『城のある町にて』(1925)で試みていることに気づいた。試しにそれぞれの聞きなしを転記してみる。
「僕」 ジーツクツク、オーシーンツクツク(繰返し多)、モーイーヨー(繰返し少)、ジー
「泉」 ジュウジュウジュウ、オシーツクツク(繰返し多)、オシホー(繰返し少)、ジュウウウ
「梶」 チュクチュクチュク、オーシ・チュクチュク(繰返し多)、スットコチーヨ(繰返し少)、ジー
ところで、僕の職場近くの松林では、毎年7月初めにツクツクホウシが鳴き始めて、7月末には、あちこちで盛んに鳴きだしており、10月の初めまで鳴き声を聞くことができる。これは、たまたまなのか、あるいは松林と何か関係があるのだろうか。