大井川通信

大井川あたりの事ども

9.11の夜

どうということのない日常の出来事が、いつまでも新鮮に思い出されるということはあるが、やはり社会的に大きな事件は、はっきり記憶に残るものだ。

2001年の当時は、仕事が忙しく、深夜の帰宅が当たり前だった。長男が小学校に入学し、次男は2歳に。頭を床にたたきつけるヘッドバッティングを始めていて、帰宅のとき自宅に近づくと、その音が聞こえてくるのが憂鬱だったころだ。

たしか夜の12時前後に家の戻ると、テレビがついていて、ふだんあまりニュースに関心がない妻が、大変なことが起きていると興奮して話した。画面には、世界貿易センタービルの遠景が映し出され、ビルからは、煙があがっている。一機目の旅客機がビルに突っ込んだ後だったのかもしれない。

そのあと多くの報道があったが、特に印象に残っているのが、火災に追われて、高層階の窓に折り重なるように殺到する人々の姿だ。次々と、そこから落ちてくる人がいる。小さな粒のような人間が、しかしはっきりと表情まで見えるような気がして、いたたまれなかった。

あれから17年がたち、両親を含めて、たくさんの知り合いが、この世を去っている。どんな気持ちで、その時を迎えたのか。

僕も、子どもの頃、運動会で徒競走の順番を待つ時のように、だんだん前に並ぶ列が少なくなってきているのを感じる。