大井川通信

大井川あたりの事ども

木の穴の恐怖

ヤマガラが、木の幹に出来た穴に何度も出入りしているのを見てから、林を歩いていても、木の穴がむしょうに気になりだした。上を向いた木の穴には、水がたまっていることがある。ヤマガラは、そこで水浴びをしていたのだ。

その同じ穴の中に、今度は、スズメバチがゆっくり入っていくのを見た。しばらくしてから、飛んで行ったが、何をしていたのだろうか。

林の木々には、想像以上にたくさんの穴があいている。おそらく、そこには、人目を避けて生物たちの営みが行われているのだろう。穴は木の幹深くに達し、地中にまで続いていて、どこか別の世界へと通じているのかもしれない。

別の木の幹にある穴をのぞきこむと、暗い水面に半分顔を出しているカニと目が合った。カニはしばらく僕を見ていたが、ふいに穴の奥深くに消えてしまった。