大井川通信

大井川あたりの事ども

脱力系のカトリヤンマ

日の射さない林の中を、大柄のトンボが飛んでいる。見た目はヤンマのようだが、ハグロトンボみたいに、はかなげに羽をばたつかせて飛ぶ。みしみしと大男が歩くようなオニヤンマの力強さや、高速ギンヤンマの自由自在な飛行とは比べるべくもない。

近くの枝にとまると、重力にまかせるように、羽を広げて身体を垂直にぶら下げているのも、見るからに脱力系だ。腹はとても細くて、先端にはIC部品のような繊細な付属器が突き出ている。腹の付け根がいっそう折れそうなくらいに細い。

図鑑で調べると、カトリヤンマだった。林の中で、とくに夕方を好んで活動するらしい。こうしてトンボの名前も、身近なところからひとつひとつゆっくり覚えていこう。植物や花の名前には、相変わらずいっこうに手がかりがないが。