大井川通信

大井川あたりの事ども

巨大魚の遡上

職場の昼休みに散歩していると、コンクリートで三面を固められた用水路の流れの底に、大きな魚の影を見つけた。鯉やナマズがいてもおかしくないので、まじまじと見つめると、ヒレが目立たないぬめっとした姿に、ナマズだろうと見当をつけた。しかしどこか違和感がある。少し黄色味がかった身体に、濃い褐色の大きな斑紋が並んでいて、ヘビやトカゲなど爬虫類を思わせる姿なのだ。

用水路の水かさは、せいぜい10センチくらいだろう。ナマズらしき魚は二匹いて、連れ立つように、のろのろと流れに逆らって進んでいく。身体が接するくらい隣り合ったかと思うと、少し離れて前後となる。時々、流れにそって身体を伸ばして、休むみたいにじっと動かなくなる。かと思うと、尾びれを激しく動かして、一瞬ダッシュするように前に進むこともある。つかず離れずで、お互いを意識していることが見て取れる。グロテスクな外観だが、なんだかちょっと微笑ましい。

たまに水面に口をあけて、呼吸するように仕草をする。ムナビレはたたんでいるみたいで目立たず、尾びれを左右にふって進む。水が浅いから、背中が露出してしまう場所でもゆっくりと休んでいる。付近にはアオサギも多く、このくらいの水深なら、用水路の底に舞い降りて、獲物をねらうだろう。いくら身体が大きくても、アオサギの鋭いクチバシの攻撃を受けたら、ひとたまりもないはずだ。用水路の先のため池を目指しているのかもしれないが、無謀じゃないのか。

そんな二匹の近くに、一回り小さな本物のナマズが追い付いてきて、流れに逆らって先にいってしまった。ナマズには目立つ斑点はないし、頭がもっと左右に平たく広がっていて、何よりヒゲがめだつ。やはり、二匹はナマズではない。

あとで調べると、ライギョカムルチー)だった。1923,1924年頃に朝鮮半島から日本に持ち込まれた外来魚とされる。オスとメスで協力して子育てをするというから、繁殖期以外でも、ペアで行動することもあるのかもしれない。口からの呼吸もできるそうだ。鋭い歯をもっていて、カエルやカメ、鳥のヒナまで喰いついてエサにするという。大型のサギでも反撃される恐れがあるから狙わないのだろう、と納得できた。