大井川通信

大井川あたりの事ども

ミソサザイを看取る

 朝から職場で、スズメが部屋に紛れ込んだと騒いでいる。窓を開けて出て来るのを待っているのだが、書棚の上などに隠れてなかなか飛び立たない。ようやく飛び立つと、ガラスにぶつかって、またどこかに隠れてしまった。

こんどは部屋を横切るようにながく飛んで、ガラス窓に激突する。ちょうど僕の目の前の飾り棚の上に落ちた。瞬間、小鳥は首を大きくねじって痙攣したので、不安そうな小鳥の瞳と目が合った気がした。僕はあわてて、小鳥にてのひらをかぶせて、そっとつかみとるようにする。

てのひらを開くと、スズメではなく、ミソサザイだった。全身焦げ茶色の日本で一番小さな鳥だ。くちばしなど短い針のように細い。手のひらにまったく重さを感じないので、秤にのせるとわずか10グラムしかなかった。ちなみにスズメでも体重は25グラムくらいある。

ガラスにぶつかった鳥がしばらく気絶したあとで、回復する様子を何度か見ていたので、しばらく室外において観察してみたが、やがて両足をそろえて伸ばすようにして身体が固まってしまった。

今年の2月にもミソサザイが職場に迷い込んで、そのときは無事逃がしている。もともとのすみかは森の深いところだから、人工の建造物にはさほど慣れていないのだろう。残念だ。