大井川通信

大井川あたりの事ども

寒風にゆれる女郎蜘蛛

以前、電灯近くのジョロウグモの巣に、一面コバエのような小さな虫がくっついているのを見たことがあった。明かりに集まったコバエが捕まってしまったのだろう。しかしこれでは、巣の存在が一目瞭然だ。すると主であるジョロウグモが、その一つ一つを口でくわえて引っ張って巣からはずし、長い足の先を使って外に投げ落としているのに気づいた。明らかに巣の掃除を始めている様子だ。

それで天邪鬼な僕は、またこんな「実験」を思いついた。ジョロウグモの巣に大小の枯葉や草の実や花を投げつけてくっつけてみる。巣はまるで色とりどりの洗濯物を干した網のようになってしまう。これではエモノがかかることはないだろう。

するとさっそく大きな枯葉からはずしにかかる。コバエと違ってひっぱってもどうにもならない。周囲の糸を切って、巣の一部ごと落としてしまうようだ。翌日にみると、小さな木の実や花びらもきれいに取り払われている。大きな枯葉ごと落とした巣の一部も、きれいに修復がすんでいる。

よく見ると、巣にかかったエモノの虫はくっついたままだ。きっとまだ食べかけで、用済みになったら巣からはずして落としてしまうのだろう。ジョロウグモも、自分たちの命を支える巣のメンテナンスには一生懸命なのだ。

11月に入ると、林の中のジョロウグモの巣も日に日に減っているような気がする。林の小道でいきなり巣にさえぎられることも無くなった。今日あたりは、昼間にジャンパーを着ていても寒いくらいだ。冷たい風に吹かれて、ジョロウグモも自分たちの季節が終わりに近づいているのを悟っているように見える。

無体な実験はもうするまい、と今さらながら反省した。