大井川通信

大井川あたりの事ども

獲物のあがる日

海からの風が強く、波も荒い日、朝から松林の上にはカラスが飛び回っている。こんな時、二羽で追いかけっこを始めるカラスが必ずいる。どこかはしゃいでいるようだ。

夏には子どもたちが占拠していた浜辺も、今は荒涼として、鳥たちが獲物があがるのを待つえさ場となる。

カラスたちが群れている波打ち際に行くと、骨だけになった大型の魚の姿がある。腹をえぐられたアナゴも落ちている。赤いカニの甲羅が粉々になって散乱していたりもする。周囲には大量の鳥の足跡。すごい食欲だ。

鳥たちは、気象条件から獲物が打ち上げられやすい日を知っているのだろう。大型のカモメが三羽、浅瀬に足を浸して海を見つめている。カラスは水には入らない。砂浜に並んで、獲物を待っている。そこへ悠然とトビがやってくる。

海風の強い日、滑空の名人トビの自在の飛行に磨きがかかる。カラスの群れている浜辺に急降下して、獲物を奪おうとする。カラスがトビを追い払いにかかる。いつもは猛禽類のトビを応援するのだが、今日はカラスの気持ちがわかるような気がする。

僕が浜辺を歩くと、カラスの群は松林の上に逃れ、カモメは遠くへ場所をかえる。人間の中ではからきし意気地のない僕も、ちょっとした王者の気分。