大井川通信

大井川あたりの事ども

こんな夢をみた(山口昌男)

舞台は今住んでいる住宅街なのだが、例によって様子が違う。もっと広々として、見慣れた住人もいない。

すぐ隣の組に、文化人類学者の山口昌男(実際は故人で、一度だけ講演を聞いたことがある)の夫婦が引っ越してきた。同じ自治会でもグループが違うのだが、おせっかいで彼らの助けをしようと会合に参加する。(実際の自治会には、組ごとの集まりはない)

会合の場所は、その組の中の一軒の家で、二階の座敷は公民館みたいに広々としている。廊下を出て二階の北側に回ると、細長いベランダがあって、それが外側に傾いてぐらぐらしている。僕はあわててそこに置かれた家具を中の部屋に運びこむ。

その部屋には組長の人がいて、僕が家の構造の不安を口にすると、彼の家の床も水平ではないという。ツーバイフォー構法だから筋交いの手抜きではないだろう。造成地全体の地盤が問題かもしれない。僕は、同じ悩みについて真剣に話し合えたことに満足する。

座敷の会合に加わると、僕は、山口さんが国際的にも高名な学者であり、自宅を離れている日数も多く、役員を引き受けるのは無理であることを力説する。(自治会では役員の押し付け合いが恒例だ)

その後、座敷で隣りに座った山口さんと世間話をする。僕が今村先生のゼミにいたというと、関西の面白いおっちゃんだったという。遺著の『社会性の哲学』はあれだけの内容なのに日本の学界はすぐに忘れると僕は知ったかぶりをする。山口さんはちょっと憮然として、あの本が〇〇さんが評価していたよと答えた。