大井川通信

大井川あたりの事ども

イソシギと赤い実

日曜日の晴れた朝、久しぶりに大井川べりを歩く。狭い川底に、おしりを上限に振りながら歩いている地味な鳥がいる。尾羽は短く、まるっこい。イソシギだ。何年も前からこのあたりで見かける。

小さな橋を渡って、村の賢人原田さんの住まう古民家カフェへ。賢人は庭で、薪割りの準備をしている。これから、子どもたちを集めて薪で焼き芋を食べさせるようだ。作業をやめて振り返った賢人の笑顔がおどろくほどいい。年齢による垢や澱が抜けて、生まれたてのような表情だ。

川向に住むAさんが亡くなって、10日ばかり前に葬儀があったという。Aさんは精力的に活動する人で、僕が区長をしていたときにも、コミュニセンターで事務局長をしていて毎月会議で顔を合わせていた。

橋のたもとに見事な古木があって、水神様の神木と向かいあっていた。何年か前、Aさんが何を思ったか、その古木を切ってしまった。Aさんが生まれる前から、村を見守ってきた古木である。そのあとすぐに水神様の神木が台風で倒れた。今年になって、Aさんの隣に住む兄弟が、大けがをした。こんどはAさん本人が病であっという間に亡くなった。村人でなくとも、そこに何かを感じ取ってしまう。

娘さんから、聞き書きでお世話になったひろちゃんの体調がおもわしくないと聞いたので、訪ねる。朝から自家用車がないから、出かける元気はあるのだろう。会えなかったけれども少し安心して戻る。

大井の里山にも赤や黄の木々が混じって美しい。集落の中の小道には、鮮やかな赤い実があちこちにみのっている。冬はもうすぐそこだ。