大井川通信

大井川あたりの事ども

家族の人形と猫の人形

今年も、筑豊山中で正月に開かれる木工の展示会に行ってみた。そこで小さな猫の人形を購入する。展示室の隅に置かれた試作品のようだったが、ご主人の内野筑豊さんに頼んで売っていただいた。

我が家には、十数年前に内野さんから買った家族の人形がある。こけしのような頭と胴体だけの造形のたくさんの人形の中から、思い付きで家族それぞれの特徴や雰囲気に似ているものを四体選んで、家族に見立てたのだ。

今は子どもたちも身体が大きくなり、子どもらしい雰囲気も無くなってしまったけれども、この四体の人形を見ると、当時の家族の様子がありありと蘇る。不思議なことだが、当時の家族写真以上にリアルな家族そのものに見えるのだ。

「見立てる」という行為の力だろうか。時間をかけてそう思い続けることで、各人の個性や魂のようなものが転移したのかもしれない。並べられた四体の人形同士が、家族のきずなのようなものを育んだのかもしれない。

そこに年末に迷い込んできた子猫の人形を加えたかった。子猫見たさに長男が早めに帰省したこともあって、猫を中心にひさしぶりに和やかで楽しい家族の時間を過ごすことができた。妻も三人目の育児のつもりではりきっている。

四体の人形が取り囲むように猫の人形を置くと、同じ内野さんの作品だけあって、ぴたりと決まる。あちらの家族も、新たなメンバーの登場に本当に楽しそうだ。

あちらの。そう、もはや彼らは、僕らの手の届かない別の世界の住人にさえ見えるのだ。