大井川通信

大井川あたりの事ども

兄弟の家

大井で以前にあったこと。

ある家に住む兄弟同士が、何かでいさかいを起こし、一人が一人を鎌で切りつけたのだという。血だらけになって倒れた兄弟を見てようやく我に返った男は、兄弟を殺してしまったと思い、近くの木で首を吊ったそうだ。切られた方の兄弟が息を吹き返して起き出して、ぶらさがって死んでいる男を発見したのだという。

生き残った兄弟も、その後家を離れて長く病院に入院していたらしい。

その家の場所は、字名で山口といって、ちょうど里山にのぼる谷の入り口に当たる。近くの子どもたちも、その事件を知っていたので、その家には近づかなかったそうだ。

今では家も取り壊されてやぶになっており、僕はその脇を抜けて山に入りミロク様にお参りに上がっていた。そのやぶの中に、新しい小さな石の地蔵があるのを不思議に思っていたのだが、おそらく、自殺した兄弟の供養のために置かれたものだったのだろう。