大井川通信

大井川あたりの事ども

ため池の子どもたち

ひろちゃんの娘さんから聞いた話。

子どもの頃、おてんばだった娘さんはマスマル池に入って泳いだそうだ。池の土手では友だちや弟が見守っている。もう足がつかないところまできたとき、子どもたちが騒ぎだした。娘さんの先を泳いでいたいとこの女の子が、おぼれだしたのだ。

両手をばたばたさせて、水に沈みそうになっている。しかし娘さんも体力の限界のところまで泳いでいて、とても助けにはいけない。その時、いとこの長い髪の毛が水面に揺れているのが目に入ったそうだ。思わずそれをつかんで、夢中で池の土手までひっぱってきて、いとこを助けたのだという。いとこに身体にしがみつかれたら、二人ともおぼれて死んでいたかもしれない。

この話を聞いて、別の大きなため池の土手の脇に、新しい地蔵が置かれていたのを思い出した。だいぶ以前に見つけた時は、だれか信心深い人が気まぐれで置いたのかと早合点していたが、近ごろは人が意味もなく地蔵をまつったりしないことがわかってきた。

おそらく、そこでおぼれた子どもを供養しているのだろう。