大井川通信

大井川あたりの事ども

隣人を推理する(その2)

たぶん同じころだと思うが、我が家の風呂場がのぞかれるという事件があった。風呂場の窓は、隣家の敷地と我が家のカーポートをはさんで向かい合っている。

妻が風呂に入っているとき、換気のために数センチだけ開けていたはずのサッシの窓が、気づくと10センチ近く開いている、ということが何度か続いたそうだ。その時は勘違いと思っていたそうだが、ある晩、僕が自転車で帰宅すると、カーポートにひそんでいる男とばったり遭遇するという事件があった。男は脱兎のごとくフェンスから道路に飛び降りて逃げてしまい、パトカーを呼んでもあとの祭りだった。しかし、これでのぞきの疑いがはっきりした。

今回隣家の主人が盗撮でつかまると、あの時の犯人もそうだったのでは、と疑わしく思われるのは仕方がない。近所でも、今までに何カ所かで風呂場をのぞかれるという被害があったようで、隣家の主人の犯行と噂されているようだ。

しかし、トイレに盗撮機器を設置するのと風呂場ののぞきとは、性犯罪の嗜好としては、少し違うような気もする。逮捕なんてことになると、なんでもかんでも当人の犯行にされてしまうのは気の毒なものだ、くらいに考えていた。僕個人としては、のぞきまでが隣家の主人の犯行とは、とても思えなかったのだ。

先月には、自治会の回覧板で、町内に防犯カメラの設置の検討がすすめられているという知らせがあった。この地域でも、子どもに声をかける不審者の情報があり、それへの抑止力も期待してのことだという。しかし20年の歴史のある町内で、そんな検討は初めてのはずだ。あきらかに隣家の主人をターゲットにしての対策である。

外から見れば、痴漢も盗撮も子どもへのいたずらも、性犯罪としていっしょくたなのだ。隣家はいよいよ針のむしろだったろう。しかし、さすがに我が子と同じ校区の子どもたちに手を出すことはないはずだ。僕は、町内の事件については、のぞきも含めて白なのではないか、という見解に傾いていた。

しかし、このとき僕が見落としていたのは、200世帯に満たない地域(近隣を含めても千世帯くらい)の中に、性犯罪を大胆に実行に移すような人間が何人もいるわけはないという単純な確率の問題だった。