大井川通信

大井川あたりの事ども

旅の途中のオオソリハシシギに会う

 昼休み、浜辺を歩いていると、ミサゴが海の上を砂浜と並行に飛んでいく。筋肉質の白い姿に見とれていると、また一羽あとを追うようにして飛行する。青空をバックに直線的に羽ばたき、滑空する姿は美しい。

ミサゴを見ると、ついつい近くに知り合いがいるときは、あれが英語名でオスプレイだと教えたくなる。うるさいおやじと思われるだろうが、ぼんやり見ていたらトビやカモメと区別がつかないだろう。それはもったいない。

しかし、平日の今日は、浜辺には人っ子一人いない。砂浜に目を移すと、不思議な形の鳥がたたずんでいる。異様に細長いクチバシに、短い尾と長い足。シギの仲間だろう。丸っこい胴体はハトより大きいくらいだが、あまり警戒心は強くないようだ。

波打ちぎわの浅瀬で、歩きながら長いクチバシを水底に突き刺して、さかんにエサを探している。クチバシを刺し入れる角度は意外と浅くて、すくい上げているようにも見える。クチバシの形状が少し上に反っているのは、そういう使い方とも関係あるのだろうか。進化というものはおそろしい。

あとで図鑑で調べると、オオソリハシシギ(大反嘴鷸)という鳥だった。渡りの途中に立ち寄る旅鳥だという。水辺で十把一絡げに観察できてしまう水鳥の仲間にはあまり関心がもてないのだが、旅鳥と言われると、一期一会の出会いのようで興味がわく。

それで何気なくこの鳥の分布図を見てビックリした。繁殖地はシベリアの北岸で、越冬地は東南アジアから南半球のオーストリアの沿岸に及ぶ。とにかく半端でない移動距離だ。文字通り赤道から北極海へと向かう旅の途中なのだろう。

あのユーモラスで穏やかな姿のどこにそんな力がたくわえられているのか。あらためて僕の目の前でエサをあさっていた彼女の来し方行く末を思いやった。