あっこさんのお店でカレーを食べながら、地元でお年寄りの介護の仕事をする友人たちと話をする。
デイケアの利用者で、最近古い屋敷を離れて、新しい入居施設に入ったご夫婦がいるという。本当は、自分たちの家と土地で暮らしていたいはずだ。おばあさんは、私さえしっかりしていたら、おじいさんが元の家にいられたのにと悔やむ。しかし、そんなおばあさんも手押し車でやっと歩けるくらいで、おじいさんは痴呆で話すのも難しい。
若いころなら転居など何でもないことのようだが、慣れ親しんだ環境を血肉化し、その手助けで生活しているお年寄りには、とても過酷な経験だ。介護の世界では、リロケーションダメージ(移り住みの害)という言葉が使われる。
しかし、おばあさんは、新しい家具や電気製品に囲まれて、おじいさんにやさしく新婚生活に戻ったようだと語りかける。
こんな夫婦になれるなら結婚も悪くないね、と友人。